国の持続化給付金事業は、実体に乏しい一般社団法人を経由して委託・外注が重ねられ、業務の運営が不透明だとの批判が上がっている。「ひ孫請け」にあたる企業の子会社で給付金審査を担当する派遣社員は、無駄の多さや目まぐるしく変わる審査基準など現場の実態を語った。 (嶋村光希子)

 「『資料を読んでください』と指示され、ほぼ一日、何もしなかった」。東京都北区にある審査現場で働いていた男性は、五月一日の申請初日から数日間のことを振り返った。後に、初日は申請が殺到したことで経産省中小企業庁のホームページにアクセスしにくくなっていたことが分かった。初日と二日の申請分のうち、一万件超の未入金があることが六月十日、明らかになった。

 審査は次から次へと回ってくるのではなく、待ち時間の方が長い日もあったという。「時給が付いているのに居眠りする人もいて無駄が多い」と業務の進め方に疑問を持った。

 男性は大日本印刷の子会社「DNPデータテクノ」への派遣社員。大日本印刷は元請けの一般社団法人サービスデザイン推進協議会から数えて、三次下請けとなるいわば「ひ孫請け」企業だ。広告大手の電通などとともに、法人の構成企業でもある。男性がいた北区以外にも、複数の審査拠点があるが、法人は一切公表していない。

 男性ら関係者によると、審査を担当する人たちは複数の派遣会社に所属している。勤務は昼と夜に分かれ、時給は千〜二千円台。机とパソコンが並ぶ部屋では百〜二百人の派遣社員が作業をしている。作業内容は、全国各地から送られた確定申告書の控えや売り上げ台帳を照合し、本人確認書類などをチェックする。持続化給付金にちなみ、業務のことを「JK」と呼ぶそうだ。

東京新聞
2020年06月11日 07時12分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/34782
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