やっぱり“官邸の守護神”は事件を潰したのか――。東京高検検事長だった黒川弘務氏が賭けマージャンで辞職する直前、安倍首相の重大疑惑「桜を見る会」に関する市民の告発が、検察庁によって「不受理」とされていたことが分かった。

 告発は、神戸学院大教授の上脇博之氏らが今年1月14日に行ったもの。教授らは「桜」問題を巡り、安倍首相本人を背任罪で東京地検に告発したが、同31日、検察庁から「不受理」の通知が届いたという。通知文には不受理の理由として「代理人による告発は認められない」という趣旨が記されていた。


 この検察の判断は極めて異例だ。上脇教授らはこれまで、下村博文元文科相の後援会が受け取った加計学園からのパーティー券収入が収支報告書に不記載だった問題や、猪瀬直樹元東京都知事が徳洲会から受け取った5000万円が公選法違反だとして、今回同様、代理人弁護士を通じて告発状を東京地検に提出している。他にも複数の告発を行ってきたが、過去、「代理人による告発」との理由で不受理にされたことは一度もなかったというから不可解だ。

 この点を26日の衆院法務委員会で突いた共産党の藤野保史議員の質問に、法務省の川原隆司刑事局長は「通説的に、告発については刑事訴訟法の規定を基に『代理』を認めないと解している」と一般論を展開。「過去に同様の例はあったか」と追及されると、「把握できていない」とダンマリを決め込むしかなかった。

 黒川氏はやっぱり暗躍していたのか。教授らの告発がはじかれた1月31日は、ちょうど黒川氏の定年延長が閣議決定された当日。次期検察トップへの道が開けた日でもあった。上脇教授はこう言う。

「現場の検察官らが次期トップに忖度したのか、黒川氏自身が部下に指示したのかは不明ですが、黒川氏の存在が『不受理』と判断する原因となったように見えます。もちろん、安倍首相本人が告発の対象だったことも影響したのでしょう。悪しき前例を残さないためにも、今後も反論していくつもりです」

 “守護神”が力業で潰さなければならないほど桜疑惑は根が深いということなのか。

日刊ゲンダイ
2020/05/29 06:00 
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