コロナ危機でかき消されがちだが、この国会は「桜を見る会」疑惑、東京高検検事長の定年延長などへの安倍晋三首相の説明責任も焦点だ。宰相の「ことば」はどうあるべきなのか。

■仲間の登用 増す「自分は特別」感 水島広子さん(精神科医・元衆院議員)

 安倍さんの国会での答弁、ヤジ、イライラとした表情を見ていると、自分とは異なる意見を言われ、それを自分への脅威とみなして反撃しているように見えます。人間は、「攻撃を受けた」と感じなければ、他人を攻撃するようにはできていないからです。

 政治家は自己愛が強いと言われます。「自分は特別な存在」という性格そのものは、私は全否定しません。人を酔わせる演説も、自己愛が強くなければできませんから。自己愛は多くの政治家にとって不可欠なエネルギー源です。

 しかしもう一つ、まっとうな政治家に欠かせない条件があります。それは、他者への共感力です。他者とは、自分とは異なる意見をもつ人たちも含みます。

 ひと昔前の自民党政治家には、自己愛と共感力を車の両輪のように併せ持つ人が少なくなかったように思います。「ためのある」政治家と言っていいかもしれません。

 たとえば田中角栄さんは、地方に道路をどんどん造ってしまう一方、恵まれない人への人情や涙もろいところもあった。森喜朗さんだって、国会答弁などで野党議員だった私への気遣いを感じたことがあります。力をもつ与党政治家は、力をもっているがゆえに、力をもたない人たちの声も聞く――という鷹揚(おうよう)さ、寛容さがあったのです。

 今や、そんな政治家はめっきり少なくなった、と感じるのは私だけでしょうか。

朝日新聞
2020年3月15日08時00分
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