官僚の裁量でいつでも廃棄でき、「桜を見る会」を巡っても問題視されている保存期間1年未満の公文書。2017年の公文書ガイドライン改定で、原則として7類型のみに裁量での廃棄を認めたはずだったが、複数の省庁の職員の証言から、情報公開逃れが目的でルールが骨抜きにされている実態が浮かび上がった。

開示しなくて済む「よくある誤解」

 「7類型に設定できる文書はごく限られたものにするはずだったのに、今では拡大解釈され、何でもかんでも放り込んでいる」。防衛省で文書管理を担当する職員は、こう明かした。

 16〜17年に起きた自衛隊の南スーダン国連平和維持活動(PKO)日報問題では、防衛省がジャーナリストからの情報公開請求に対し、実際は保有しているのに「1年未満文書のため廃棄済み」として不開示を決定。後に「隠蔽(いんぺい)」が発覚して大きな批判を浴びた。

 こうした教訓を踏まえて改定されたガイドラインでは、裁量で廃棄でき、廃棄記録の作成・公表も不要な1年未満文書を「原本の写し」など7類型に限定したはずだった。だが、同省職員によると、今も「文書隠し」は続いているという。毎日新聞は、同省統合幕僚監部が日報問題を受けて作った公文書(行政文書)管理の教育用資料を情報公開請求で入手。資料には「本当によくある誤解」として、こんな記載があった。

 「保存期間を1年未満にすれば、行政文書ファイル管理簿に登録しなくていいので、(政府のウェブサイトの)イーガブに(ファイル名が)掲載されず開示請求の対象にならないから請求はこないし、開示しなくて済む」

 情報公開法上は、公文書は保存期間に関係なく開示対象となるが、資料ではこのように「誤解」する職員が多いとされていた。さらに、1年未満の保存期間が終わると再び1年未満に設定し直すなどの手法で「永遠に1年未満として保存できる」との「誤解」も、よくあると指摘されていた。

 統幕は資料の中ではこうした「誤解」を改めるよう強く戒めており、防衛省は「教育により職員が正しい認識を持つに至ったと考えている」としているが、職員は「統幕以外でも横行している。いまだに『誤解』している職員は多い」と話す。

毎日新聞
2020年2月17日 06時35分
https://mainichi.jp/articles/20200216/k00/00m/040/163000c