◆最も評価された「外交・安全保障」
直近の11月の調査で、これまでの安倍内閣の実績として最も評価していることを6つの政策課題の中から選んでもらった結果、
最も多かったのは「外交・安全保障」の23%で、特に自民支持層では33%と3人に1人があげた。
背景の1つに安全保障環境の変化があげられる。

北朝鮮が相次いで弾道ミサイル発射した後の2017年7月と9月の調査では8割超が不安を示し、
政府が北朝鮮に対する厳しい措置や圧力強化を打ち出すと、「評価する」という人は半数を超え、自民支持層はさらに高い割合だった。
外交の他の項目をみると、たとえば日韓関係が悪化するなかでの「韓国を輸出管理優遇対象国から外す決定」について尋ねた
2019年8月調査では「支持する」が55%、自民支持層では66%だった。
こうした外交政策では全体でも一定の評価を得つつ固定支持層でさらに高い支持をつかんでいる。

◆アベノミクス
安倍内閣で評価する実績を尋ねた質問で「経済政策」をあげた人の割合は4番目だったが、
一橋大学教授の中北浩爾さんは、「アベノミクス」こそが経済を大きくして成長をめざす自民党の伝統的手法への回帰であり、
安倍政権は第1次から第2次政権で、小泉政権時代から受け継いだ「改革」から「成長」にシフトチェンジしていると指摘する。
そのうえで「『成長』というのは自民党の支持基盤にとっては受け入れやすい。

特に国土強靭化とか公共事業とかいったことは小泉改革とか2000年代の民主党政権時代ではずっと否定されてきたわけですけど、
成長はそういったことも含むわけです。『改革』という言葉は無党派層に届きやすい一方、敵を作る可能性もある。
安倍総理は自民党のありかたというものを傷つけない範囲で改革を行い、自民支持層を固めているのが小泉政権との大きな違い」と話す。

◆民主党政権の記憶
東京大学名誉教授の御厨さんは、
「あの民主党政権、と言われたときに、ああ、あれよりは安倍さんいいよねという気持ちを起こされる。
だから、あのときの政権交代というのは本当に安倍さんには有利に働いて、単にそこで政権交代しただけでなく後の選挙に全部効いてくる。
だからある時期からもう安倍さんは不戦勝みたいなもので、戦わずして勝っているようなところがある」

一橋大学教授の中北さんは、
「改革を打ち出すことで熱狂的な支持を獲得してきた小泉総理に対し、安倍総理は、国民の熱狂的支持があるわけではないが、
やっぱり消極的支持がある。民主党よりはましだ、経済もいいでしょ、政治も安定しているでしょということが下支えになっている」

「単に政権の力だけでできたわけではなくて、民主党という対抗する最大勢力が失敗したっていう後にこそ出現したという感じでしょうか。
それは安倍総理自身、相当意識してやられているし、また、民主党の失敗ということで国民も安倍政権がいいと。
政権を戻しちゃいけないということで自民党も結束していくと。そういう中で安倍長期政権が成立したのではないかと」

◆小泉政権との比較

御厨さんは、
「小泉さんは先手を打つんです。これからこういうことにしたいとか、全体の政治の流れをこういうふうに持っていきたいというときに、
必ずそれに合うようなワンフレーズの言葉を入れて、みんなが何だろうと思ったところで、
またぽんぽんと言っていくから自然とみんなそれについていくわけです」

「安倍さんの場合、既に起こったことや何かについて、必ずそれに立ち戻ってこれはこうだったという説明をするわけです。
そして追及されたことに関して最初ははぐらかす。はぐらかしがきかなくなってくるとついに逆襲するわけです。
小泉政治というのはちょっとポピュリズム的なところがあって、
あまり説明はしなくても『おい、行こうぜ』みたいなところで、みんなついていってしまう。

だけど安倍さんの場合そういう風にはならない。絶対安倍さんが嫌だっていう層がいるから。
だから安倍政治というのは、ポピュリズムだとは誰も思わない」
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https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/25957.html