作家・室井佑月氏は、中国、韓国、北朝鮮のトンデモ映像を流すテレビ局の思惑を考えてしまうという。

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 8月17日、久米宏さんがご自身のラジオ『久米宏 ラジオなんですけど』で、反韓一色の今のテレビに苦言を呈した。

「テレビが反韓国キャンペーンをやっているような匂いが、僕、少しだけするんです」

 だよね。少しなんてもんじゃない。もう行きつくとこまで行ってしまった感じ。

 具体的にいえば10年くらい前から、中国、韓国、北朝鮮のトンデモ映像が流れるようになった。

 手抜き工事で崩れるビルとか、汚染した川、ルールを守らない人々の映像だ。 それを観てコメンテーターたちがニヤリと嗤(わら)う。

 あたしはそれを嫌だな、と思っていた。この国は、よその国の発展の遅れを嗤うことができるのか? この国だってちょっと前に通ってきた道だ。

 この国がそれを欧米のテレビなどにやられたらどう思う? てか、やられていたでしょ。昔、向こうのテレビや映画に出てくる日本人ってかなりバカにされていた。カメラを首にかけ、ヘコヘコなんにでも頭を下げる日本人みたいな。

 たぶん、お金を持ち始めた日本人に対し、自分たちより下のくせになんだよ的な感情があったんだと思う。

 今はスマートフォンなどで簡単に映像が撮れるから、その国のイケナイ映像を入手できる。けど、それを日本でわざわざ流すことにどんな意味があるのだろう。

 それらはニュースではない。だとしたら娯楽? 趣味が悪い。

 それを一つ流すことによって、我々に報じられるべきニュースが一つ消える。文書改ざん、事故を起こした福島第一原発への対処、貧困者増加……。この国は問題だらけだというのに。

 久米さんは、

「いま韓国を叩くとね、数字が上がるんじゃないかっていうね」

 といっている。でなきゃ、連日こんなにやらない、と。それもあるだろう。けど、あたしは無邪気に数字を追っているだけではない気がする。

 安倍政権が音頭を取っている?

 たとえば、安倍さんが中国包囲網と拳を振り上げていたときは、中国のトンデモ映像がさかんに流れていた。が、この国は、中国に完璧に抜かされてしまった。安倍さんも中国の名を出さなくなった気がする。

 北朝鮮の金正恩は、今のところトランプさんと仲良くやってる。だから、北朝鮮の話はしなくなった。

 そして、参議院選挙の前に安倍さんが韓国を敵対視しだした。「信用できない」とし、輸出優遇のホワイト国から外した。そしたら、韓国が日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた。

 信用してない国からそうされたんだから、べつにどうでもよかろうとならず、連日テレビが大騒ぎしてる。どうしたいんだよ!

 戦前か? 忖度メディアが酷すぎる。過去の戦争を煽ったのも、メディアのお仕事。煽られ酷い目に遭ったこと、忘れちゃならん。

※週刊朝日  2019年9月13日号

2019/9/5 07:00
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