先月30日に閉幕した第7回アフリカ開発会議(TICAD)。安倍首相は、開幕日の同28日からの4日間で、各国首相ら47人と会談。大メディアは「マラソン会談」などとヨイショしているが、とんでもない。アフリカ軽視と受け取られかねない大失敗をやらかしていたからだ。

 安倍首相はTICAD開幕の前日(27日)、G7が開かれていたフランスから帰国。翌28日の「STSフォーラム(科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム)」でのあいさつの冒頭、いきなりやらかした。

「STSフォーラムは英語でスピーチすることが義務付けられているのですが、きのう私、ビアリッツから帰ってきたばかりで練習する時間がなかったので日本語で話をさせていただきます」

 照れ隠しなのか、ニヤニヤしながら語ったが、国際会議の“ルール”を勝手に破るとはこれほど参加国に失礼な話はないのではないか。どうして“約束”通り英語でスピーチしなかったのか。

 そもそも、南カリフォルニア大へ留学経験のある安倍首相が、練習しないと英語でのあいさつができないこと自体おかしいが、国際会議の場で「練習する時間がなかった」との言い訳が通用すると考える方がどうかしている。

 さすがに、会議に参加していたアフリカ諸国は表立って抗議しなかったものの、不満に思っていたのは間違いないだろう。それに、スピーチを練習する時間はいくらでもあったはずだ。

 安倍首相はTICAD直前までG7開催地のフランスにいたが、G7直前の先月16〜21日まで「夏休み」を満喫。山梨県鳴沢村の別荘で静養し、ゴルフ三昧の日々を送っていた。つまり、ゴルフをする時間はあったけど、スピーチの練習時間はなかったというワケだ。

 安倍首相は2015年4月に米国議会で行ったスピーチについて、演説前日の夕食会で「演説の練習を部屋でしていたのですが、妻は聞き飽きたと言って、きのうは別々に寝ることになりました」と、練習にまつわるエピソードを披露している。

■アフリカ諸国をバカにしている

 米国での演説は時間をかけて周到に準備したのに、アフリカ諸国が参加する今回のSTSフォーラムでのあいさつは「練習していない」と開き直ったのだから、失礼にもほどがある。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)がこう言う。

「『外交の安倍』の傲慢さがよく表れていると思います。欧米に向けては頑張って練習をして英語でスピーチするのに、アフリカ諸国の集まる国際フォーラムで同じ対応をしないというのは、アフリカ諸国を軽んじているという外交メッセージを国際社会に発信することに等しい。そもそも、STSフォーラムでのあいさつは、日本語で5分なので、英語で話しても大した分量ではありません。短い英語のスピーチさえ練習しないとできない人物は、一国の首相としてどうなのでしょうか。TICADへの真剣味が欠けている証左ですよ」

留学仲間であり、安倍首相の“腹心の友”である加計学園の加計孝太郎理事長は、日経新聞(2010年9月21日付)のコラムで、安倍首相の英語について「カタカナを読むような英語」と評している。

 大人になっても“夏休みの宿題”を忘れるような男に、首相は任せられない。

日刊ゲンダイ
19/09/02 15:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/261183/