中国に対する制裁関税「第4弾」を発動したアメリカに対し、中国も即座に報復関税を発動。過熱する「貿易戦争」は、出口が見えなくなってきた。いずれ、日本が尻拭いさせられるのは時間の問題だ。

 中国が報復関税の対象として狙い撃ちにしているのがアメリカの農産物。なかでも打撃を受けるのが大豆農家だ。なにしろ、中国は世界最大の大豆の買い手である。中国で大豆を売れなくなったら、アメリカの大豆農家は壊滅的な打撃を受ける。

 それでなくても、アメリカの大豆農家は“米中貿易戦争”のトバッチリを受けて苦境に陥っている。世界の大豆価格は、米中対立が勃発した2018年7月以降、9%も下落。昨年の大豆の対中輸出量は前年比74%減となっている。

 これから大豆は秋の収穫期を迎える。ただでさえ昨年の在庫を大量に抱えているだけに、大豆農家の経営は一気に悪化してもおかしくない。そこで、トランプ大統領は、大量に余った大豆を日本に無理やり買わせるのではないかと、懸念する声が広がっている。

実際、トランプが、大豆や小麦などの具体的な品目をあげて、安倍首相に巨額な購入を直接要請した、と8月中旬に報じられている。

■大豆の一大産地は重要な選挙区

 トランプは8月25日、フランスで行われた日米首脳会談の後、共同会見の場で「中国が約束を守らないからアメリカではトウモロコシが余っている。そのすべてを日本が買ってくれることになった」とうれしそうに語ってみせた。“第2弾”として、余った大豆を大量に購入させられることが予想されているのだ。

「トランプ大統領が農家に気を使っているのは、来年の大統領選のためです。トウモロコシの輸入を迫ったのは、一大産地であるアイオワ州が『アイオワを制する者が選挙を制する』といわれるほど大事な州だからです。大豆も同じです。農業が主要産業である中西部は、トランプ大統領の大票田であり、しかも、選挙のたびに結果が変わるスイングステートです。再選を狙うトランプ大統領は、どうしても落とせない。中国に代わって大量の大豆を購入できるのは日本くらいしかない。トウモロコシにつづいて大豆の買い上げも迫ってくるはずです」(経済評論家・斎藤満氏)

 本当に日本とアメリカは、大手メディアが称賛するように「蜜月」なのか。

日刊ゲンダイ
19/09/03 06:00
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