東京地検特捜部が、太陽光など再生可能エネルギー事業で急成長したJCサービス(大阪市)に対する捜査を本格化させ、関係者の事情聴取を行っている。同社は、兵庫県庁職員だった中久保正己社長が阪神・淡路大震災に遭遇、多様なエネルギーインフラの必要性を感じて設立した企業。2012年に固定価格買い取り制度がスタート、一時は追い風に乗っていたJCサービスに何があったのか。

 電力業界関係者は、「検察に狙われる3つの要素があった」という。

「第1に、許認可や売電権などを巡って不正が多い太陽光発電を手掛けていたこと。第2に、業界全体のビジネスモデルが壊れたソーシャルレンディング(SL)で資金を調達したこと。第3に、大樹総研の矢島義也会長や細野豪志元環境相らと付き合いのある『政治銘柄』だったこと」(前出の電力業界関係者)

順に検証してみよう。

 電力会社が全量を固定価格で引き取り、しかもスタート時、1キロワット時当たり40円と高値だったこともあり、太陽光発電は大変な人気だった。だが、その分、地権者の同意なしに売電権だけを取得するブローカーが横行。反社会的勢力が関与、許認可権を持つ役所への収賄工作を行うなど、怪しい業者も少なくなかった。

 SLも同様。ネットで投資家を募り、10%前後という高配を約束する貸し付け型のクラウドファンディングだが、借り手保護の観点から投資家には概要しか開示されない。それが目的外使用や詐欺的な勧誘につながり、その発覚が相次いで2000億円に達したSL業界全体に不信が広がっている。JCサービスもそのうちの一社で、SL子会社を通じて200億円もの事業資金を集めていたが、昨夏、金融庁の行政処分を受け、子会社からの調達の道は断たれた。

 また中久保氏は、許認可が絡む事業だけに政治力が欠かせないと判断。窓口に大樹総研を選び、5億円のコンサルタント料を支払っている。矢島氏は自身の結婚式に菅義偉官房長官をはじめ、政官財の“大物”を集めた人物。矢島氏の他、細野氏には5000万円を貸し付けるなど、中久保氏の“備え”には限りがない。

 新しい制度が導入され、ビジネスモデルが確立される時、必ず利権が発生する。特捜部はお盆休みの前に、企業主導型保育事業を巡る助成金詐欺で、ブローカーの川崎大資被告らを起訴した。「保育園落ちた日本死ね」という母親のブログから始まったこの保育所新設は、3年で3800億円が投じられる安倍政権の目玉事業となったが、そこにキッチリと政治力を使って食い込んでくる勢力がいることを忘れてはなるまい。

 特捜部には、公的資金が絡む新事業の摘発を通じて、犯罪者の罪を問うだけでなく、制度やシステムの抱える矛楯の解明も期待したい。

日刊ゲンダイ
19/08/20 06:00
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