総理大臣の通算在職日数が11月に桂太郎(2886日)を抜き、憲政史上最長に達する安倍首相だが、長期政権に伴う「弊害」も指摘されている。霞が関の役所にみられる人事をタテにした「忖度」だ。その傾向は官僚組織にとどまらない。メディアや芸能界でも、政権批判の声を上げた出演者は次々と表舞台から去った。“物言えば唇寒し”の風潮が社会に広がる中、ツイッターで真正面から鋭い政権批判を続けているのがこの人だ。今の日本を取り巻く政治状況の問題などについて聞いた。


  ◇  ◇  ◇

 ――連日のようにツイッターで政権批判しています。もともと政治に対する興味、関心が深かったのですか。

 政治に興味を持ったのは師匠の談志(故・立川談志)が参院議員(1971〜77年)だったからです。選挙の時は遊説も手伝い、当選後の6年間は何度も議員会館に通いました。入館受付のチェックが厳しくてね。いつ何時、何の目的で、誰を訪ねるのかを面会証に書くのですが、目的に「稽古」と書いたら、怒られて「陳情」と書き直したなんて笑い話もあります。参議院会館ですら、そうなんですから、官邸の入館記録がないなんてことはあり得ないんです(笑い)。

 ――談志さんは無所属から自民党に入党していますね。


 談志の師匠だった小さん(落語協会8代目会長の柳家小さん)が佐藤(栄作元首相)さんに口説かれたため、自民党に入ったわけですが、そのおかげで、かばん持ちだった私も当時の自民党政治家をたくさん見ました。ある時、談志が銀座の店で飲んでいたら、若き日の中曽根さんがさっそうと近づいてきて、こう話し掛けました。「これは松岡先生(談志の本名)。こちらで飲んでいると聞き、近くを通りましたので、ご挨拶に」と。そう言ってビールを談志のグラスにつぐと、さっと引き揚げました。あの大勲位が、一介の新人議員に挨拶ですよ。当時の自民党の懐の広さ、深さを肌で感じて、自民党って、格好いいなあと実感しましたよ。

 ――その師匠の古巣である自民党に辛口ですね。

 談志が政界を引退した後、政治の世界をしばらく離れていたわけですが、再び、関わるきっかけは2011年3月の東日本大震災です。特に福島原発事故でした。あの時は民主党政権だったのですが、ひどいなと感じたのは野党だった自民党が激しく与党攻撃していたこと。今は与野党関係なく、一丸となって問題解決に取り組むべき時だろうと思っていました。しばらくして、自民党は再び政権の座に就き、安倍政権となったのですが、相変わらず誹謗中傷の類いの野党攻撃を続けている。それを見ていて、ちょっと待てと。これは俺の知っている自民党じゃあねぇ。そう思いました。


■安倍さんは戦争をしたがっているとしか思えない

 ――かつての自民党と今の安倍政権は違うと。

 全く違いますね。今の自民党は保守でも何でもなく、カルトに近いでしょう。談志の友人だった(評論家の)故・西部邁先生は、第1次政権の安倍首相に「保守とは何ぞや」と随分とレクチャーしたそうですが、「とうとうご理解いただけなかった」と嘆いていましたから。

2につづく

日刊ゲンダイ
19/08/13 06:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/260069/