父は韓国人、母は日本人。白真勲参院議員(60)=立憲民主党=は40代半ばで日本国籍を取得するまで在日韓国人として過ごした。韓国語を自由に操る日本で唯一の国会議員であり、超党派の日韓議員連盟メンバーとして韓国の国会議員とのパイプも太い。1965年の国交正常化以来最悪ともいわれる日韓関係のはざまで、両国にルーツを持つ国会議員は何を思うのか。

 −日韓は政府間の対立が激化し、双方の国民感情も高ぶっている。自身の経験から感じることは。

 「私は子どものころから、ガラス細工のように繊細な日韓関係を体感してきた。感じるのは、日本人と韓国人は違うということを、みんなが分かっていないということ。顔や肌の色が似ているから、考えや感覚も同じだと錯覚し、自分の国の物差しで相手の国を測ってしまう」

 「言いたいことの70パーセントしか言わない日本人に対し、韓国人は120パーセント言う。それで日本人は『なぜそこまで言うのか』と口数の多い韓国人に反感を持ってしまう。違いを認め、違いを楽しむ余裕があるといいのだが」

 −日韓議連は7月末、来日した韓国の国会議員団と会談した。

 「主張は平行線だったかもしれないが、私が『子どもたちの交流、文化やスポーツ交流まで政治が阻害してはいけない』と強く主張したところ、韓国の議員たちも拍手してくれた。これは日韓で一致できた部分だ。元徴用工問題は韓国が解決策を示すべき問題だ。会談では韓国の議員が『必要な法整備を検討する』と述べた。半歩前進と受け止めている」

 −日本政府の輸出規制強化に対し、韓国で日本製品の不買運動が起き、双方のビジネスに影響が出始めている。

 「日本も同じだが、相手国をたたくことが『愛国者』とみなされる。双方の政権は相手国に厳しい態度を取るほど支持率が上がる。しかし、隣国と仲良くする方法を考えるのが真の愛国者のはず。私は日本の国会議員として、隣国と仲良くすることこそ日本の国益だと言いたい」

 「最近、韓国への機中で隣の席になった若い日本の女性から『日韓関係ちゃんとしてください。仕事がやりにくい』と厳しく言われた。政治が経済をやりにくくしてはいけない。政治家として申し訳なく思う」

 −相互理解に必要なことは。

 「私は朝鮮日報の日本支社長も務めたが、マスコミにも問題がある。激しい言葉を切り取って記事にしがちなので、記事を見た相手が応酬する。マスコミ報道で恨みつらみのキャッチボールが起きている状況を脱しないと」

 「いまは韓国で『日本を好きだ』とは言いにくい空気だが、多様な意見がある。日本にも韓流スター好きの若者はたくさんいる。歴史問題だけ考えると疲れる。楽しいこと100、つらいこと1のバランスでいいんじゃないか」

 はく・しんくん 1958年、東京都生まれ。父は韓国人、母は日本人。日本大大学院建築工学修了後、韓国紙の朝鮮日報日本支社に入社。94年から約10年、同支社長を務めた。2003年に日本国籍取得。04年参院選の比例代表で民主党から初当選、現在3期目。日韓議員連盟では社会・文化委員長を務める。

西日本新聞
2019/8/9 6:00
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