あと3日で投開票日を迎える参院選はラストスパートに突入。いまひとつ盛り上がりに欠ける中、「投票先が決まらない」――とボヤく無党派層をターゲットに、ネット上では、棄権と死票を減らすため「戦略的投票」を呼びかける声が高まっている。

 戦略的投票の発想は極めて単純。最も投票したいと思う候補の当選・落選がほぼ確実の場合、最善の候補に投票するのではなく、次善の候補に投票するという戦術だ。要するに、「好きな候補」の当落がハッキリしていて、「嫌いな候補」と「好きでも嫌いでもない候補」が接戦の場合、「好きでも嫌いでもない候補」に票を集めることで、「嫌いな候補」を落選させることが出来る。

 貴重な1票をなるべく「死に票」にせず、「生きた票」にするための方策である。

 実際、成功例もある。31人が乱立した2016年の東京選挙区(定数6)で立憲民主党(当時は民進党)の小川敏夫参院議員は投票の3日前から、“戦略的投票”を呼びかけた。すると、当時おおさか維新の会から出馬した作家の田中康夫氏との“6位争い”を制し、約4万票差をつけて当選した。当選確実とされていた立憲の蓮舫副代表(当時は民進党)の票を小川議員に集めたことがギリギリ勝利につながった。

 今回の複数区では、自民党、公明党、憲法改正に前向きな日本維新の会などの「改憲勢力」と野党候補がつばぜり合いを演じている。

■すべては無党派層次第

 どの候補者に戦略的投票をすべきか――。日刊ゲンダイの調べによると、自公維のいずれかの候補と野党候補が最下位当選を争っているのは、北海道、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、広島の7選挙区。このすべてで自公維のそれぞれの候補を破り、野党候補が当選すれば、改憲勢力が国会発議に必要な3分の2の164議席を握る可能性はなくなる。

 加えて、維新は大阪ダブル選で取り戻した勢いを失うことになり、“ゆ党”とヤユされてきた政権補完の立場も薄れる。さらに、32ある1人区のうち与野党が熾烈なバトルを繰り広げている10選挙区(別表)で野党候補がどれだけ勝つかによって、安倍1強の圧倒的状況を打ち破れるかもしれない。

「投票率が50%チョットの状況では、組織力を持つ自公の議席数を落とすことは難しい。日本では、ある候補を当選させるために投票する傾向が強いですが、特定の候補を落とすための投票行動もあっていい。だから、改憲反対運動として、改憲に前向きな議員を落とすために投票することは、有権者の意思表示のひとつの形として根付くべきです」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)

 複数区の最終議席での野党の勝ち星と1人区での伸びによっては、自民は前回16年の獲得議席56に届くどころか、50議席を割り込む可能性もゼロではない。

 すべては投票率と無党派層の投票の動向次第だ。改憲をゴリ押しする安倍政権を倒すための戦略的投票が広まり、複数区と1人区の17議席を野党が獲得できるか。国家の命運がかかっている。

日刊ゲンダイ
19/07/18 15:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/258513/
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