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「報復」の応酬は避けなければならない。

日本政府による対韓輸出規制強化で、日韓関係が深刻な状況に陥っている。規制発動から1週間以上を経て、初めて開かれた事務レベル会合も歩み寄りはなく、冷ややかな雰囲気が漂った。

発端は昨秋、韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟の判決である。訴訟への対応を巡る両国の立場の違いが、相互不信を増幅させた。

日本政府が事実上の対抗措置として打ち出したのが、半導体などの製造に必要な材料3品目の輸出規制強化だ。安全保障上の脅威となる電子部品などの輸出を厳しくし、規制が緩和されている「ホワイト国」から除外する準備も進めている。

半導体産業は韓国経済を支える「屋台骨」である。大統領府がすぐさま「国際法違反は明白」と批判したのは、規制による製造業への打撃を心配してのことだ。

韓国は世界貿易機関(WTO)への提訴も辞さない構えを見せる。日本は安全保障上の国内運用の見直しでWTO違反に当たらないと主張する。

この輸出規制は、非難の応酬を続ける段階から、強硬措置という新たな段階に踏み出すもので、緊張の度合いはこれまで以上に増している。

元徴用工問題で事態を放置してきた韓国側にも責任はある。しかし政治に通商を絡める手法は自由貿易の旗を掲げる日本の看板を傷つけかねない。

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輸出規制を巡っては、尖閣諸島の領有権に関する日中の対立で、中国がレアアース(希土類)の対日輸出を滞らせる措置をとったことがある。

トランプ米政権も安保を理由に鉄鋼などの輸入制限を発動した。

外交の道具として経済に影響を与える手段が、国際的に問題視されたことは記憶に新しいはずだ。

加えて今回日本政府が取った対韓輸出規制の強化が元徴用工問題を解決へと導く保証もない。

確かに元徴用工の請求権は1965年の日韓請求権協定で「最終的に解決された」ことが確認されている。日本側が訴訟による実害が企業に出ないよう韓国に求めたのは当然である。

政府間で「解決済み」であることは間違いないが、元徴用工らの傷をどうしたら癒やすことができるのか。歴史の事実に向き合うのはまた別の問題だ。

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昨年、日韓両国の年間往来者数が初めて1千万人を突破した。

民間レベルの訪問が活発化する中、日本政府が反発を承知で強硬措置に踏み切ったのは参院選で保守層へアピールする狙いもあるのだろう。

韓国で日本製品の不買運動などが起きるのは、織り込み済みということなのか。

ただ報復の連鎖が起これば、日韓関係は修復が一層困難になる。

感情的になりやすい問題だけに、冷静に着地点を探る努力が必要だ。そのためには首脳同士の意思疎通が不可欠である。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190715-00445426-okinawat-oki



(略)