「自公過半数の勢い」と伝えられる参院選で、野党の追い上げが止まらない。安倍首相は改選数66のうち「(自民単独で)60台を取りたい」と周囲にもらしているらしいが、そうは問屋が卸さない。自民敗北必至の4選挙区に加え、“失速”している選挙区がいくつもあるからだ。

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 自民の獲得議席は、2013年参院選の65から、16年は56まで減らしたが、今回は、その56議席を割り込むとの分析が出ている。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。
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「勝敗の行方は32ある1人区が握っています。年金をめぐる老後資金2000万円問題が浮上したことで、野党の追い上げを許しました。自民党は1人区で、最小でも7、最大で13候補が敗れると予想しています。1人区で13も落とすことになれば、前回の56議席を割り込むことも考えられます」

 問題の1人区のうち自民敗色が濃厚なのは、山形、長野、愛媛、沖縄の4選挙区。「山形は競っているものの、野党候補がリードする展開」(県政関係者)だという。残る3選挙区も、野党や野党系無所属の統一候補が10ポイント以上の差をつけており、自民不利の状況が続いている。

 加えて注目すべきは、自民候補が野党候補からの追い上げを許す青森、秋田、岩手、宮城、福島、新潟、滋賀、大分の8選挙区だ。

 とりわけ、菅官房長官の出身地・秋田では、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を巡る防衛省のずさんな調査が発覚したことで、無名の新人が現職を猛追している。新潟選挙区に出馬している自民党の塚田一郎氏は、公共事業を巡って安倍首相と麻生財務相に「忖度した」と失言して以来、地元で“そんた君”とヤユされる始末だ。

「4日の公示直後に実施された、ある政党の調査によると、これら8選挙区のうち既に岩手、宮城、新潟で、野党候補に逆転を許したようです。その他の選挙区では、自民候補がリードしているものの、1〜10ポイント差まで縮まってきたと聞きます。5ポイント差以内なら誤差の範囲。5〜10ポイント差は安心できません。自民にとっては厳しい戦いになるでしょう」(政界関係者)

■敗色濃厚4選挙区と1人危うい5複数区

 自民が苦戦しているのは、1人区だけではない。複数区の北海道、東京、千葉、広島では、2人目の候補が落選危機に陥っている。

 保守分裂となった広島は、新人で河井克行衆院議員の妻の河井案里氏が自民現職の溝手顕正氏とガチンコバトルを繰り広げている。大阪選挙区は元府知事の太田房江氏1人に絞ったが、2人擁立している維新の会に保守票を奪われると当選は危ういともっぱらだ。

「自民は4選挙区で敗色濃厚。8選挙区で失速中。そして、5複数区では確実に1人が落選危機を迎えています。これら17議席を失うと、比例で前回と同じ19議席を獲得しても、合計51議席にとどまります。安倍首相が望む60議席台は厳しいかもしれません」(前出の政界関係者)

 大メディアが公示直後に行った「選挙情勢調査」の結果は、いずれも“自民圧勝”。あと9日で野党の反撃がどこまで自民を追い詰められるか。

日刊ゲンダイ
19/07/12 15:00 
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/258199/
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