社民党が「政党存続」を懸けた選挙戦に挑んでいる。参院選の結果次第で公選法上の政党要件を失う可能性があるためだ。長らく党勢は低迷し、野党共闘でも埋没気味だが、前身の社会党から掲げる「護憲」を前面に掲げ、危機脱出を目指す。

 「崖っぷちの戦い。国政政党としてこれからも働かせてほしい」。公示日の4日、東京・新宿駅前での第一声で吉川元・幹事長が訴えたのは「国政政党」存続の危機感だった。

 公選法上の政党要件は「所属国会議員5人以上」もしくは「直近の衆院選か参院選のどちらかで全国得票率2%以上」。この要件を満たせないと、衆院選で政見放送ができなくなるなど不利になる。ただし政党助成法は政党要件が異なるため、少なくとも2022年まで維持される。

 党所属の国会議員は現在、衆参2人ずつの計4人だけ。00年衆院選では19人が当選したが、10年以降の国政選挙は2人以下にとどまる。今回は選挙区3人、比例代表4人の計7人を擁立。不出馬の現職がいるため、人数要件でクリアするには2人以上の当選が必要だが、議席増のハードルは高い。

 焦点は得票率でクリアできるかどうかだ。17年衆院選の比例得票率は1・69%。衆院選に続き、今回の参院選でも2%を割れば、「国政政党」返上となる。党幹部は「何としても得票率2%をクリアする」と悲壮感を漂わせる。

 ただ、戦略は野党共闘で制約を余儀なくされた。野党4党は改選1人区で候補を一本化。社民も鹿児島選挙区で擁立を目指したが、共闘を優先して国民民主党に譲った。選挙区擁立による比例票上積みの目算が狂い、党幹部は「共闘か、埋没か。まさにパラドックスだ」と頭を抱える。

 期待するのは護憲への支持だ。17年衆院選でリベラル色の強い立憲民主党に「支持層を奪われた」(党関係者)ことを踏まえ、参院選公約は「護憲政党の老舗」とPR。憲法の理念を絡めた政策を列挙し、解散権の制限など内容次第で改憲論議を容認する立民との違いを意識する。

 党本部には「社民がなくなったら、憲法はどうなるんですか」とのメッセージを添えた寄付も届く。比例代表で立候補した吉田忠智・前党首は「一貫して訴えてきた憲法9条を守る姿勢を訴え、他党との違いを出す」。党関係者は「暴走する安倍政権で社民が消えれば、憲法は守れるか。危機感を有権者に伝えたい」と意気込む。

西日本新聞
2019/7/6 6:00
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