「老後2千万」問題に端を発し、作家・室井佑月氏は、今後年金制度がどのように維持されるのか知りたいという。

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 6月14日配信の共同通信ニュースによれば、「金融庁の三井秀範企画市場局長は14日の衆院財務金融委員会で、老後資産の報告書が批判を集めている問題について『配慮を欠いた対応で、このような事態を招いたことを反省するとともに深くおわびする』と謝罪した」という。

 なぜ、金融庁が謝るのかね。誰に対して謝ってるの? あたしは逆に、もっと詳しい報告をあげて欲しかったぐらいだ。今回、金融庁があげた、老後に年金以外でかかる金2千万円、あれ、厚生年金の人たちの話じゃん。

 国民年金の給付額は厚生年金の平均額の半額以下(2019年度は満額で1カ月6万5008円)。だとすれば、国民年金に加入している人々は、老後資金、5千万円以上かかるのか? 年金未加入の人は1億円くらい? ま、今回は金融庁が安倍政権の、またまたトカゲのしっぽになったって形か。報告書を金融庁が勝手に作ったわけじゃあるまいし、嘘の報告書を出してきたわけでもないのにさ。

 あの報告書を作らせた大本は麻生金融担当相、ひいては安倍自民じゃない? 税金使って調査して(立憲民主党の蓮舫さんのTwitterによれば、あの報告書を作成するために318万8500円かかってるらしい)無かったことにするって、酷いわな。

 あの報告書を読んだ限り、株価を下げないため個人のお金を株に突っ込ませたかった、もしくは年金を今までのように払いたくないから、といいたいように感じた。それを政府が国民に、衝撃を与えずうまく伝えられなかっただけじゃね? 麻生さんが以前に、ナチスの政権を引き合いに出して言った「あの手口を見習え」ってのが上手くいかなかったってだけじゃね?

 あたしたち国民に大事なのは、年金についてどう伝わるかより、これから先、年金制度をどう維持していくかだ。それには真実を知りたい。5年に一度の年金の『財政検証』。5年前は6月初めの公表だったのに、まだ公表されていない(10年前の公表は2月)。なんか嫌な予感がする。選挙前だかなんだか知らんが、早くほんとの数字を出して説明してくれよと思う。

 超少子高齢化のこの国、年金制度が今のまま上手くいくわきゃないと薄々感じている人だっている。テレビではこの件についてコメンテーターが、「前からいわれていることだし、もうわかっているだろう」というようなことを物知り顔で話している。が、そんなあいまいにしていいことじゃないと思う。

 年金に生活のすべてを頼っている人、頼ろうとしている人、一部生活費の補填に年金を使っている人、そうしようと思っている人たちにとって、急にダメになりました、急に減額されることになりました、ていわれるのが一番こたえる。生死に直結する話だから。

 政治は国民を守るためにあると思ってたが、安倍自民に国民の命を守る気はあるんだろうか?

※週刊朝日  2019年7月5日号
2019/6/27 07:00
https://dot.asahi.com/wa/2019062600011.html