20日のロシア軍爆撃機による日本の領空侵犯に対し、首相官邸が沈黙している。29日に安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領による首脳会談を控え、北方領土交渉に影響を与えないよう配慮しているとみられるが、足元を見られた「弱腰外交」との批判が出る可能性もある。

 防衛省によると、ロシア機2機は20日午前8時53分ごろ、日本海から対馬海峡を通過して東シナ海を飛行後、太平洋を北上した際、沖縄・南大東島領海上空に侵入。さらに同10時22分ごろ、うち1機が東京・八丈島領海上空に侵入した。航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)した。

 日本政府は20日にモスクワで行われた日ロ外務次官級協議でロシアに抗議。ただ、菅義偉官房長官は21日の記者会見で、領空侵犯に関し「ロシア側の意図を分析中」などと述べるにとどめた。日ロ首脳会談で取り上げるかや、日ロ平和条約交渉への影響を問われても答えなかった。
 官邸と連動するように、河野太郎外相は会見で政府対応などを問われても「事務方にお尋ねいただきたい」と繰り返した。
 28、29両日の大阪での20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせたプーチン氏来日を目前に控えたタイミング。日本政府関係者は「徹底して取り上げて外交問題にしようとする気はない」と語る。自民党のベテラン議員の一人は「G20前にロシアをいたずらに刺激したくないというのが、今の官邸の思いだろう」との見方を示した。

時事通信
2019年06月22日07時43分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019062101118&;g=pol