ティッシュがない――。首都圏など一部の店舗でティッシュが品薄になり、数量制限をする店が続出している。4月の王子製紙春日井工場の火災が直接の原因とされるが、実は、古紙不足も背景にある。米中貿易戦争は、半導体や5Gなどハイテクだけでなく、ティッシュや段ボールの原料である古紙をめぐっても繰り広げられているのだ。

 制裁関税合戦が続いている米中貿易戦争。昨年8月、中国は米国への報復措置として、米国から輸入する古紙の関税を25%に引き上げた。

「中国にとって米国は古紙の最大の輸入国です。25%の関税が発動されて以降、中国は古紙の調達先を日本にシフトしました。その結果、日本国内で古紙が足りなくなり、逼迫しました」(日本製紙連合会総務・広報部の担当者)

 実際、中国向けの古紙の輸出価格は高騰。関東製紙原料直納商工組合の昨年10月積みの輸出価格は1キロ=27・5円と同1月積み比43%も高く、17年7月の過去最高値(27・7円)に迫った。

「需要が旺盛で価格が上がれば量産すればいいのですが、古紙の場合はリサイクルなのでコントロールできません。古紙は、いらない時にあって、欲しい時にないことが日常茶飯なのです。過度の需要は大混乱を起こします」(ジャーナリスト・木野活明氏)

■トイレットペーパーや段ボールも…

 2018年の中国の古紙の輸入量は、米国からが前年比45%減と制裁関税の影響で大幅に減った。しかし、それでも636万トンでダントツだ。日本からの輸入は9%増の275万トン。昨夏以降、日本にシフトしたといっても、米国の半分にも届かない。

 つまり、米中貿易戦争が長引き、中国が米国産古紙離れをいっそう加速させれば、日本の古紙が中国に持っていかれる余地がまだあるということなのだ。

「構造的に不況だった製紙業界は、リサイクルの古紙を使う努力をしてきました。工場のラインも古紙を使う前提になっています。中国による日本の古紙輸入増が一時的ではなく、長引くことになれば、ティッシュだけでなく、トイレットペーパーや段ボールも品薄になりかねません」(木野活明氏)

 1973年のオイルショックでは、「商品がなくなる」と思い込んだ消費者が、トイレットペーパーを求めてスーパーに殺到。大行列ができた。米中バトルが収束しなければ、あの悪夢が再来してしまう。

日刊ゲンダイ
19/05/22 15:00 
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/254419/