安倍晋三首相が政権に復帰して6年半。権力が放つ強い磁力に吸い付けられるように、首相官邸の意向が霞が関で忖度(そんたく)される構図が強まっている。それが社会に影響を及ぼし、さらに政権基盤を強める「磁界」を形成していく――。長期政権がもたらす政治、社会の変容について、夏の参院選を前に考える。

 新元号が令和に決まった4月1日、安倍晋三首相は一部の民放とNHKをはしごした。NHKの報道番組「ニュースウオッチ9」には冒頭から出演。元号に込めた思いなどを語った。

 「多くの方々に前向きに明るく受け止めていただいて本当にほっとしました。明るい時代になるなと、そんな予感がしております」

 歴史的な決定を行ったこの方に来ていただいた――。キャスターは首相をそう紹介したが、NHK報道局職員の一人はこう話す。「首相が出演することはいつのまにか決まっていて、制作現場には事前に相談もなかったようだ」

 長期政権と公共放送の現在の関係を考えさせる人事もあった。NHKは4月9日、子会社NHKエンタープライズ社長の板野裕爾氏が、本体の専務理事に返り咲く役員人事を発表。局内では、幹部から現場の職員にまで波紋が広がった。「また振り回されるのか」

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朝日新聞
2019年5月22日21時31分
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