後半国会で先週末、いわゆる「大学無償化法」が成立した。来年4月から低所得世帯の子どもを対象に授業料減免と給付型奨学金支給が始まる予定だが、恩恵を受けるのはホンの一部。むしろ、サラリーマン家庭は負担増の可能性大なのだ。

〈大学無償化詐欺だ〉

〈大学以前に生計が成り立たないレベルの世帯じゃないか〉

〈まず両親の給料が上がる社会をつくってやれ〉

 無償化とは名ばかりの新法成立を受け、ネット上にはこうした批判があふれている。支援策の内容は、夫婦と子ども2人(うち1人が大学生)の年収270万円未満の住民税非課税世帯の場合、国公立大は授業料年間54万円について一部の大学を除き全額免除、私大は最大70万円を減額。奨学金は国公立大自宅生で約35万円、私大下宿生は約91万円の支給だ。

 年収380万円未満であれば3分の1から3分の2の額の奨学金を受けられる。

■高校、大学卒に必要な費用は1人1000万円

 一方、基準を超えると支援が全く受けられなくなる。今、減免を受けている学生は対象から外されるのだ。国会審議でこの点を突かれた柴山文科相は「対象とならない学生も生じ得る」とモゴモゴ。「学びを継続する観点から、実態などを踏まえて配慮が必要か検討する」とお茶を濁したが、文科対策を担当する財務省の中島朗洋主計官は「新制度は支援を低所得層に重点化するもの。中間所得層の在学生の支援は、大学自らの経営判断で続ければいい」とし、切り捨てた。

 国公立大はそれぞれ基準が異なるが、母親と自宅生の2人世帯の場合、東北大は世帯年収462万円以下で全額免除。お茶の水女子大や名古屋大、大阪大などは398万円以下が対象。私大には減免額の半分を国が補填する仕組みがあり、年収841万円以下の給与所得者世帯が対象だが、どうなるかは不透明だ。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏は言う。

「日本政策金融公庫の実態調査(2017年度)によると、高校入学から大学卒業まで必要な入在学費用は935.3万円。子ども2人家庭では2000万円の負担になる。減免対象から外される家庭には相当なダメージです。にもかかわらず、安倍政権は“無償化”というフレーズを使って、希望する子どもはみな、タダで大学進学できるかのような幻想を振りまいている。選挙対策としか思えません。中途半端な支援策よりも、教育費そのものを下げるべきなのです」

 安倍首相が「大学無償化」を言い出したのは、モリカケ問題でふらふらになった揚げ句の「国難突破解散」だった。働き方改革で労働環境を悪化させ、実質的な移民法を入管法改正でゴマカす。デタラメ政治にはホトホトうんざりだ。

日刊ゲンダイ
19/05/14 06:00
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