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 改元の日に平壌市内のホテルでこの原稿を書いている。1年ぶり2度目の訪朝となる。4日前に入国して、平壌市内、板門店、開城市などを見てまわった。変化の見られる部分もあるし、変わらない部分もある。

変化といえば、金正恩委員長が視察して話題になった最新のテソン百貨店が変化の象徴かもしれない。ヨーロッパのブランド品を中心に日本のデパートのような装いを見せ、そこにおしゃれをした平壌市民が押し掛けていた。1階の食料、雑貨のコーナーはごった返していた。もちろん平壌は特別な場所であり、そこに住む人は特権的な立場であることは間違いない。その中でも、このデパートで買い物できる人は限られているとは思う。ただ、そういう購買層が存在し始めていることも事実だ。

通信環境も外国人に対しては変化が見られた。外国人は、シムカードを買えばスマホでインターネット接続と通話ができる。200米ドルで3カ月使える。外国のメディアの窓口となる政府系機関「朝鮮対外文化連絡協会」の担当者に通訳してもらって手続きをしたが、残念ながら私のスマホがシムフリーではなかったため購入を断念した。その時、担当者からこう言われた。

「つながらないのは、日本の側の問題じゃないですか」

しかしその後、スマホはネットにつながった。ホテルでWi―Fiが使えるようになっていたからだ。これも変化だ。去年の訪朝時にはなかった。10分で1・4米ドル。ラインがつながり、日刊ゲンダイの担当者とやりとりができた。

ただ、変わらない部分もある。制裁の影響だ。重油が入らないため、電気事情は厳しい状況が続いているようだ。何度か短い時間の停電はあった。電力供給体制を維持するため、平壌市内では全部で8基の火力発電所がフル稼働している。それは石炭火力だ。発電所から出る黒煙が空を覆う。そのため、空気はきれいではない。去年の訪朝時にも感じた空気の汚れは変わらないというより、ひどくなっているかもしれない。

このコラムではしばらく、こうした訪朝時に見たこと、考えたことを書こうと思う。読者はお気づきだろうか。この原稿に「北朝鮮」という名称は出てこない。この朝鮮民主主義人民共和国で、私も他の日本人も「北朝鮮」とは言わない。呼ばれる側がその名称を好ましいとは思っていないからだ。別に、正式名称を使う必要はない。単に「朝鮮」でよい。普通、短縮する場合、そこに「北」などの別の言葉を加えることはないからだ。

そもそも北朝鮮は、南朝鮮という国名があって初めて成立する呼称でもある。かつて西ドイツがあって東ドイツがあった。しかし日本では南朝鮮とは呼ばず、韓国と呼ぶ。南がなければ北はない。常識だ。

南北Koreaを使う英語でも、例えばトランプ大統領はDPRK(Democratic People’s Republic of Korea)という朝鮮民主主義人民共和国の英語の短縮形を使うことが多い。暴言で有名なトランプ大統領以下のことを我々がやっていることは知っておいた方がいい。

安倍総理は日本テレビの取材に、無条件で日朝交渉に応じる考えだと語ったそうだ。では、ひとつアドバイスしたい。まず、北朝鮮との呼称をやめるべきだ。そうした小さな取り組みもできないようでは、相手側に対話の機運は生まれない。

ソース:日刊ゲンダイ<トランプでさえDPRK 安倍総理は“北朝鮮”呼称を止めるべき>
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/253334


(略)