私の上司である大阪の報道部長の携帯に、怒りの電話がかかってきたのである。東京の報道局長、NHKの全国の報道部門のトップだ。電話口から「私は聞いてない。なぜ出したんだ」という激怒した声が聞こえてくる。

 私はたまたま部長の目の前にいて内容を知った。電話は繰り返しかかってきた。最後に電話が切れた時、報道部長は言った。「あなたの将来はないと思えと言われちゃいましたよ」

 これほど露骨な圧力は初めての経験だった。この場合の「あなた」は報道部長のことだが、部長はこの原稿に直接タッチしていない。その部長の将来が「ない」と言うなら、原稿を書いた私の将来は「もっとない」だろう。私は「次の人事異動で何かあるな」と予感した。

 そして次の人事。私は記者を外され、報道と無関係の部署に異動した。だから私はNHKを辞めた。大阪日日新聞に移った。そして、この時の経緯を含む森友報道の舞台裏と、記者やディレクターたちの奮闘を本に書いた。題して「安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由」(文藝春秋刊)。

 でも、報道局長は何を激怒したのだろう? このニュースを出して不都合があるのは財務 省であり、首相官邸であり、政権である。私は政権批判ありきではないが、政権に不都合なニュースも堂々と出すのが記者の心意気であり、報道機関のあるべき姿ではないか。それなのに報道局長はなぜ激怒したのだろう。忖度(そんたく)? それとも何らかの…?

 この時のNHKの報道内容について、財務 省はのちに国会での質問に対し、短く一言「事実です」と答弁し、事実関係を認めた。

 この「1億6千万円」の上限額を記したメモが近畿財務局にあり、このメモを大阪地検特捜部が入手していたと見られることも、取材の結果分かった。メモの存在は、財務局が上限額を強く意識していたことを示す。

 上限額聞き出しの面談内容は、籠池前理事長やほかの関係者にも報告され、数人が知るところとなった。特捜部も捜査によって把握していたとみられる。それでも特捜部は、背任で告発されたI統括らを不起訴にした。(大阪日日新聞論説委員・記者 相沢冬樹)

大阪日日新聞
2019/4/18
https://www.nnn.co.jp/dainichi/column/nowake/190418.html

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