安倍自民党が鬼門の大阪で3連敗を期した。

 21日投開票の統一地方選挙後半戦の最大の注目となっていた衆院大阪12区補欠選挙は、自民党の北川知克・元環境副大臣の死去に伴う弔い合戦で甥の北川晋平氏が出馬。

 安倍晋三首相、麻生太郎財務相、小泉進次郎衆院議員らが続々と現地入りするなど総力戦となったが、あえなく日本維新の会・新人候補、藤田文武氏に敗れた。

当選確実となり、藤田氏や日本維新の面々は喜びを爆発させた。
先の大阪府知事選、大阪市長選のクロス選、衆院補選大阪12区と3つの注目選挙で、維新が3連勝を飾り、自民党の脆さが露呈した。

「選挙戦終盤の世論調査では、北川氏が4ポイント差まで追い上げているとの情報だった。小泉進次郎氏が入って差を詰め、最後は安倍首相で逆転との読みだった。昨日、大阪入りした安倍首相は12区だけで3か所で演説。大阪選出の国会議員に1人80人以上は動員せよという指令まで出した。バスを仕立てて大阪12区に支援者を入れた議員もいた」(自民党幹部)

 その甲斐もあって20日に安倍首相が演説した3か所はどこも大勢の人が集まった。最後の演説場所となった、京阪電車・寝屋川市駅前は7000人を超す人で埋まった。

 それだけではない。安倍首相が大阪12区を去るとすぐさま、麻生財務相が選挙区入り。商店街をまわって、北川氏とともに「1票を」と訴えた。
自民党としては、やれる手を尽くして、筋書き通り、土壇場で逆転できるとの見立てだったという。

 自民党の大阪対策の極めつけは、本誌で既報した通り、安倍首相が吉本新喜劇で大阪コテコテのギャグをかますという電撃の作戦だった。

「勝てるとみて、吉本新喜劇の作戦も決行した。大阪で日本初開催となる6月のG20サミット首脳会議のPRと表向きは言っているが、大阪12区で勝つために手段を選ばずが本音。それなのに競い負けるとは…。安倍首相自身、大阪12区に入りでかなり手応えを掴んでいたそうで、官邸もかなりのショックを受けている」(前出・自民党幹部)

 一方、安倍自民が大阪で3連敗したことで、野党は勢いづいている。国民民主党の幹部はこう話す。

「安倍1強体制もそろそろ、終えんだ。大阪では維新が他の地方では、野党共闘でいけば、自民党と勝負できることがはっきりした。参院選では、その構図で安倍政権を倒したい」

もう一つの補選が行われた沖縄3区は、午後8時には野党統一候補が勝利宣言。自民党は国政の補選で2連敗という最悪のシナリオとなった。

 安倍首相自身がここまで大阪12区に注力したのも、夏の参院選を見据えてのものだった。

「元号を令和へ、新紙幣の発行、イチローへ令和初の国民栄誉賞を送るとぶち上げて、消費増税のマイナスイメージを払拭するつもりがどれも不発で、選挙も勝てなくなった。野党がバラバラの間に衆院解散し、衆参ダブル選挙を仕掛け、過半数だけは確実に自公政権でおさえておこうという思いが安倍首相にはあるようだ。安倍政権はこれまで解散して勝つことで求心力を保ってきた。首相の任期からも、衆院解散を打てるタイミングはそう多くない。夏に”令和解散”をしかけるのではという声が自民党内で強くなっている」(自民党関係者)

 今夏はどんな政局が勃発するのだろうか。(今西憲之)


※週刊朝日オンライン限定記事
2019/4/21 21:16
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