[東京 19日 ロイター] - 今年10月の消費増税は実施するのか、それとも延期か──。2019年度に入っても、安倍晋三首相は最終判断を示していない。18日には安倍首相の最側近・萩生田光一自民党幹事長代行が増税延期の可能性に言及。マーケット参加者の注目も集まった。

増税準備を進める経済界からは反発の声も出ているが、安倍政権の基盤強化に直結する衆院解散・総選挙に関わる問題だけに、安倍首相の「本音」がどこにあるのかをめぐり、様々な思惑が交錯。政府・与党内からは、増税の最終判断が示されないことで、政権の求心力低下を懸念する見方も出ている。

<思惑呼ぶ発言>

自民党の萩生田幹事長代行は18日のインターネット番組で「この先危ないと見えてきたら、崖に向かってみんなを連れていくわけにはいかない。違う展開はある」と述べ、6月の日銀短観が示す景況感次第で、10月の消費税率10%への引き上げを再々延期する可能性に触れた。

萩生田氏は「(10月の消費増税を)やめるなら国民の信を問うことになる」と発言し、衆院解散・総選挙もあり得るとの認識を重ねて示した。

消費増税は、法律で10月実施が決まっており、リーマンショック並みの経済的な打撃がない限り、増税は予定通りに実施すると安倍首相自身も何回も述べてきた。しかし、当初は3月中にあるとされてきた増税の最終判断が示されないなかで出てきた萩生田氏の発言は、首相の本音を「代弁」するものではないかとの思惑が政府・与党内にも広がった。

<弱い景気認識が背景、経済界は反発>

萩生田氏の発言の背景には国内景気の減速感がある。2019年に入り、中国経済の減速が表面化。対中輸出の比重が高い半導体や関連する電子部品、機械メーカーなどを中心に売り上げ、利益の下押し基調が表面化した。

中国向けを中心に輸出全体が前年比マイナスとなり、生産も1─3月期の前期比マイナスが濃厚で、1─3月期の国内総生産(GDP)が前期比マイナスになる可能性も高まっている。

機械受注にも弱さが見え、設備投資にも不透明感が漂い始めたほか、個人消費も日銀の消費動向指数などに弱いデータが出てきて、政府・日銀が強調してきた内需にも、暗い影が差し出した。

「崖に向かってみんなを連れていくわけにはいかない」という認識は、安倍首相をサポートするいわゆる「リフレ派」の学識経験者や市場参加者が共有するものだ。

だが、大規模な増税対策を2019年度予算に盛り込んだ財務省や、システム対応に追われている経済界からは、増税延期の動きに強い反発が巻き起こった。

18日朝に行われた麻生太郎財務相と日本商工会議所幹部の会合では、麻生財務相が持続可能な社会保障制度の再構築に向け、消費増税を確実に実施すると明言。日商の三村明夫会頭は「(萩生田氏の発言は)信じられない」と不快感をあらわにした。

菅義偉官房長官は18日午後の記者会見で、増税延期の可能性を問われ「リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り引き上げる予定」とし、これまでの政府方針は「まったく変わらない」と述べた。

麻生財務相も19日の会見で、増税延期になれば、企業は迷惑するのではないかと発言した。

萩生田氏は19日、前日の消費増税延期発言について「個人の見解を述べたもので、政府の方針に異議を唱えたつもりもない」と語った。

2につづく

ロイター
2019年4月19日 / 13:56
https://jp.reuters.com/article/consumption-tax-abe-idJPKCN1RV08R