10日夜に開かれた自民党の高橋比奈子衆院議員(比例東北ブロック)のパーティーで「(東日本大震災からの)復興以上に大事なのは高橋さんだ」と発言した桜田義孝五輪担当相の辞任劇。一夜明けた11日、月命日を迎えた被災地の人々は、絶えない閣僚の失言に憤った。

 震災からの復興を後押しする「復興五輪」の仕切り役が被災地への心ない発言を繰り返したことに、沿岸の住民からは怒りの声が上がった。

 岩手県宮古市長根の前川慧一さん(81)は「被災者の感情を逆なでするとんでもない発言だ。安倍総理も『被災者に寄り添っている』と言うが、寄り添っているふうには見えない」と厳しく批判。同市上村の男性(74)も「震災から8年もたっているというのに、まだ被災地の現状が分かっていない。(更迭は)遅きに失した」とやりきれない表情を浮かべた。

 宮城県気仙沼市で被災し、陸前高田市の災害公営住宅に住む紺野和人さん(67)は、被災地選出議員のパーティーでの発言に「『被災地のためにも議員をよろしく』と言いたかったのかもしれないが、言ったことは消せない。かわいそうな人だ」と哀れんだ。

 大槌町の平野公三町長は11日の定例記者会見で、桜田氏の発言について「あぜんとした」と話し、安倍政権で復興相ら閣僚の失言が相次いでいることを受け「復興道路やJR山田線などハード整備が進んでいるといっても、被災者のなりわいや生活再建の困難さは現場で見て(被災地に)寄り添うべきだ」と訴えた。

 東京五輪・パラリンピックのルワンダのホストタウン、八幡平市では事前合宿準備の真っ最中。担当職員は「悪気はなかったのだろうが、発言の内容は悪い。公の人として発言に責任を持ってほしい」と話した。【鬼山親芳、三瓶杜萌、中尾卓英、鹿糠亜裕美】

毎日新聞
2019年4月12日 08時37分
https://mainichi.jp/articles/20190412/k00/00m/010/008000c