北海道職員が昨年、道に対し、同居する同性パートナーへの扶養手当の支給など福利厚生制度の利用を申請したところ、認められなかったことが毎日新聞の取材で判明した。職員は「同性を理由に制度の利用を認めないのは、性的マイノリティーを人権課題としている道の方針と矛盾する」と訴え、支援者らは3月、職場での差別的扱いの解消や権利保障に取り組むための非営利団体「同性パートナーの権利を求める会」を設立した。

 申請したのは40代の道職員。42歳の女性と昨年7月から同居し、住民票上は同一世帯だ。札幌市が性的少数者のカップルを公的に認定する「パートナーシップ制度」に基づくパートナー宣誓もしている。

 パートナーは専業主婦で、道職員の収入で家計を賄っている。パートナーの国民健康保険料も支払っているが、2人に婚姻関係がないなどで配偶者控除や社会保険控除の対象になっていない。

 職員は昨年7月、住民票やパートナーシップ宣誓証明書、公証人に相談して作った契約書などを添え、道には扶養手当の支給や共済組合での扶養認定を、また道職員互助会には結婚祝金の給付を求めた。

 しかし、道職員の保険や年金を扱う共済組合北海道支部は「内縁関係にある場合は配偶者と同じように扱われる場合もあるが、現行の法解釈では婚姻は異性間で行われるものとしているため、同性間については内縁関係は認められない」と回答。互助会も「事実上の婚姻関係と同様の事情にあると認めることは現時点ではできない」とし、いずれも認められなかった。

 また道の人事課からは扶養手当不支給の理由について、地方自治体のパートナーシップ制度をもって手当認定をした事例は確認できない▽札幌市のパートナーシップ制度は婚姻制度とは異なる▽公金の支出を伴う職員の手当の認定は、職員間の公平性の確保と道民の理解が必要――などと説明を受けたという。

道外自治体で柔軟な対応も

 ただこうした職員の福利厚生に関して、同性カップルにも一部柔軟に対応する自治体も出てきている。

 千葉市は17年1月、公正証書や住民票の写しなどを添えて申請すれば、同性パートナーがいる職員に結婚休暇に相当する休暇や、介護休暇を認める制度を開始。結婚時に市職員互助会から支給される祝い金(5万円)も受け取れる。岐阜県関市も同性のパートナーを同居人として記載した住民票を提出すれば、結婚と同額の祝い金を給付できるよう、市職員互助会の規約を改正した。

 道の「人権施策推進基本方針」は、重要課題の一つに「性的マイノリティー」への対応をあげている。「同性愛者同士の結婚については法律上の保護が与えられておらず、相続や所得上の不利益などさまざまな困難や問題に直面している」。また、道福利厚生基本計画には「職員が心身ともに健康で安心して職務に専念できる環境作り」とある。

 同性パートナーの権利を求める会は「2人に内縁関係を認めないことこそ、職員間の公平性を欠く。性的指向や性自認に関する偏見で、勤務環境が害され不利益を被ることに相当するセクシャルハラスメントにもあたるのでは」と問題視している。【日下部元美】

毎日新聞
2019年3月31日 10時30分
https://mainichi.jp/articles/20190331/k00/00m/040/042000c