民間最終消費支出についてお話しします。

 日本のGDPの約6割を占めるのが民間最終消費支出です。これは要するに国内の民間消費の総合計額であり、ここが伸びなければ日本は経済成長できません。しかしながら、この民間最終消費支出の実質値(物価の影響を取り除いた値)は、2014年から16年にかけて3年連続で減少しました。これは、戦後初の現象です。さらに、17年は前年比プラスになったのですが、4年も前の13年を下回ってしまいました。この「4年前を下回る」という現象も戦後初です。

 これは、前回お話しした実質賃金の低下が大きく影響したと言ってよいでしょう。給料はほとんど上がらないのに、消費増税と円安で物価だけが上がってしまったため、国内消費が戦後最悪の大停滞を起こしてしまったのです。このように実質民間最終消費支出が伸びていないということは、国民の生活が全然良くなっていないことを示しています。景気回復の実感がないのは当然でしょう。

 また、エンゲル係数も急上昇しています。エンゲル係数というのは、家計の消費支出に占める飲食費の割合です。この係数が高くなればなるほど、「食べていくのがやっと」の状態に近づいていきますので、生活がどんどん苦しくなっていることを示します。アベノミクス前の12年と比べると、18年のエンゲル係数は2・2ポイントも上がってしまいました。アベノミクス前はほぼ横ばいであり、0・1ポイント程度の上下があるだけでしたから、これは大変なことです。この原因は、増税と円安で食料価格が上がった一方、給料がほとんど上がらなかったからです。

 食料価格指数を見ますと、18年はアベノミクス前の12年と比べて10・3ポイントも上がっているのです。このように国民の生活に密着した数字は極めて悲惨な状況なのですが、民間最終消費支出の方はこれでも思いっきりカサ上げした数字です。

 16年12月にGDPが過去22年も遡って改定されました。表向きには「2008SNA」というGDP算定の国際算定基準への対応のため、という点が強調されています。しかし、民間最終消費支出の方は、「2008SNA」とは全く関係ない「その他」の要素によって思いっきりカサ上げされました。一番カサ上げ額が大きいのが15年で、なんと8・2兆円もカサ上げされたのです。これほど大きくカサ上げしても、前述の通り、戦後最悪の消費低迷を覆い隠すことができていません。「その他」のかさ上げがなければもっと悲惨な状況になっていたということです。

日刊ゲンダイ
19/03/15 06:00
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