過労死弁護団全国連絡会議幹事長の川人博弁護士らは十一日、東京都内で記者会見し、過重労働の労災認定を巡って各地の労働局が、労働者の労働時間を過少に算定し、不支給とするケースが今年に入り相次いでいると訴えた。車を運転して出張した際の移動時間や会社経費での接待など、従来なら労働時間に含めていた社屋外での労働が認められにくいという。

 働き方改革の一環として、罰則付きの残業時間の上限規制が、四月から大手企業で適用となる。川人弁護士は「行政によって過少な労働時間認定が行われれば、長時間労働の実態が隠蔽(いんぺい)され、上限規制の取り締まり対象から外れてしまう」と批判した。

 同連絡会議は例示として二〇一六年五月に出張先のホテルで死亡した横浜市内のクレーン車販売会社の男性社員=当時(26)=のケースを公表した。男性は今年二月、労災不支給となった。

 男性は甲信越や中部など十数県の営業を担当。社有車で移動し、ホテルに泊まりながら取引先を回ったが、移動時間の多くは労働時間と認められなかった。

 死亡二日前には首都圏から静岡や三重に出張。遺族側は、朝出発してから夜にホテルでパソコンを使うまで約十四時間の労働を主張したが、労基署は四時間二十分しか認めなかったという。遺族は月の残業を最長で約百六十八時間と訴えたが、認定は五十二時間にとどまった。

 千葉県の建設会社の支店長が一七年に死亡し、今年二月に不支給となった事例では、会社の経費で行った接待や取引先の通夜への参列が労働時間から除外された。

東京新聞
2019年3月12日 朝刊
https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201903/CK2019031202000136.html