来るべき夏に向け、それぞれの思惑が交錯したのは東京・荒木町−−。振り向く人々の視線を気にせず、堂々と歩く元貴乃花親方(46)の姿はひときわ目立っていた。割烹の前で立ち止まると、暖簾の奥へ吸い込まれていった。

 2月28日、小さな店で貴乃花を囲んだのは、日本スポーツ界の大物たち。日本柔道連盟会長の山下泰裕氏(61)、「Bリーグ」創設者の一人で、東大理事の境田正樹弁護士(55)、そして自民党衆院議員の、遠藤利明・元五輪担当相(69)だ。

「貴乃花さんが今夏の参院選に出馬すれば十分な集票力があることは、政界全体の共通認識。『100万票は見込める』と読む党もある」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏、以下同)

 奇しくもその日に発売された『週刊新潮』は、貴乃花と遠藤議員が「数日内」に会うと報じている。なぜ遠藤議員が、貴乃花取り込みの「特命」を帯びたのか。

「貴乃花さんと遠藤さん、山下さんが会うという話は、ずいぶん前から出ていました。もともと貴乃花さんは、山下さんを非常に尊敬しており、『一度話してみたい』と言っていたのが、実現した形でしょう。

 仲介役は境田弁護士。2018年12月に貴乃花さんを東大の講義に招いた縁があり、2日後には、境田弁護士が座長を務める議連部会『スポーツ・インテグリティ』の勉強会に、貴乃花さんが飛び入り参加。遠藤議員は部会のトップを務めており、白羽の矢が立ったのです」

 勉強会に参加し、馳浩元文科相(57)のもとを訪れてもいたりと、思わせぶりな貴乃花。ついに決意を固めたのか。有力後援者で、京都・宇治市の龍神総宮社祭主、辻本公俊氏はこう語る。

「そりゃ、自民党は誘いよるやろ。親方は、NPOを立ち上げるとか、自分がやりたいことが、議員になってやれるかどうかを考えてると思う。そこに、議員の肩書がいるのかどうか。微妙なことやわなあ」

 4人が店を後にしたのは午後11時過ぎ。4時間を超える「極秘接触」を終え、ほろ酔い加減で遠藤議員と談笑しながら歩く、貴乃花を直撃した。

−−今日はどういう会合? 

「まあ、ふつうの食事会で。おいしく食べようみたいな」

−−出馬の話は? 

「まあ、もう、これでちょっと勘弁して」

 貴乃花は「じゃあ、先生!」と遠藤議員と別れ、帰路についた。続いて、山下氏。

−−貴乃花さんとどんな話を? 

「マル秘(笑)。今日初めて飲んだけど、まっすぐな人だね」

−−政界に誘われている? 

「誘われていると思うよ」

−−今日、出馬をすすめた? 

「俺が? 俺自身がずっと断わってきたのに、貴乃花さんを政治に誘うとか、間違ってもそんなことはない」

 遠藤議員は、本誌の取材に文書で回答した。

《貴乃花氏から、日本スポーツ界のインテグリティへの取組みについて勉強したいと話があったので、中心メンバーの境田先生や山下さんと一緒に食事をした。

(貴乃花に出馬意思は?)今後の活動予定を聞いたが、そういう状況ではないように思える。(出馬要請は?)そのような話はしていない》

 貴乃花の所属事務所に確認すると、政界進出は「まったくございません」と回答した。

「貴乃花レベルなら、参院選直前に出馬表明しても間に合う。自民党は相撲協会に近い議員を抱え、貴乃花さんの出馬に反発する声もあるが、野党から出られるのはもっと困る。いまはお互い様子見の段階」(前出の角谷氏)

 翻ってスポーツ関係者。

「貴乃花は、今後の食い扶持が不安でしょうがない。タニマチのなかには、『参院議員の6年間で次の動きを考えればいい』と出馬を煽る者がいて、気持ちは揺れている」

 自民党は虎視眈々。貴乃花も、思わせぶりはほどほどに。


(週刊FLASH 2019年3月19日号)
3/8(金) 6:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190308-00010001-flash-peo
https://amd.c.yimg.jp/amd/20190308-00010001-flash-000-5-view.jpg
左から山下氏、遠藤議員、境田弁護士、貴乃花