■「FMS」予算、10年前の10倍

 安倍晋三政権が、米国の武器輸出制度である「対外有償軍事援助(FMS)」に基づく高額な武器の購入を大幅に増やしている。2019年度予算案では契約ベースで過去最大の7013億円と10年前に比べ10倍以上に膨張しており、19年度予算案の防衛費を過去最大に押し上げる要因となった。トランプ大統領による米国製の軍事装備品の売り込みに応じた格好だが、FMSは「言い値」で兵器を買わされているとの批判があり、国会の予算案審議でも追及が強まりそうだ。

 FMSは米国が示した納期や見積価格を基に代金を先に決め、納品後に実際かかった費用を精算する仕組み。軍事的機密性の高い最新装備品を導入できる利点があるとされるが、契約途中で米企業の都合で費用が跳ね上がったり、一方的な納入遅れが発生したりと米側に有利な制度との批判が根強い。防衛省内でも「米国の言い値で買わされる制度」との批判がある。

 防衛省によると、19年度のFMS予算額は、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」2基の整備や最新鋭ステルス戦闘機「F35A」、早期警戒機「E2D」の購入経費などで初めて7千億円台に。18年度の4102億円から3千億円近い大幅増となった。

 FMS予算は民主党政権下の10年度は570億円だったが、第2次安倍政権下で急増し、15年度には前年度の2倍以上の4千億円を突破。F35Aや輸送機「オスプレイ」、滞空型無人機「グローバルホーク」など高額装備品を次々と購入したためだ。対日貿易赤字解消のため米国製品の購入を強く推進するトランプ氏が就任すると、増加に拍車がかかった。

 防衛予算について歴代政権は「対国内総生産(GDP)比1%以内」に収め、19年度も0・88%と1%を下回ったが、防衛省関係者は「安倍政権下ではFMSの膨張が続き、早晩1%枠を超えるだろう」と話す。

 自民党の防衛族である中谷元・元防衛相は「(FMSは)『軍事援助』と言うが、兵器の売りつけだ」などと批判。先月末の衆院予算委員会では、国民民主党の原口一博氏が民主党政権時代のFMS予算額と比較し、急増ぶりに懸念を示した。

北海道新聞
3/5(火) 11:11配信
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