領土交渉 露が遅延戦術 夏の参院選見極めも

 日本が早期の大筋合意を目指している日露平和条約交渉は、16日午後(日本時間17日午前)の外相会談でも大きな進展はなかった。

 交渉の加速化は日露首脳の合意事項だが、ロシア政府幹部は北方領土をめぐり強硬な発言を連発し、交渉は長期化の様相を呈し始めている。(ミュンヘン 力武崇樹)

 「70年間続いている問題だから、一足飛びに前へというわけにはいかない」

 河野太郎外相はロシアのラブロフ外相との会談後、記者団にこう述べ、領土問題をめぐるロシア側の強い姿勢を前に早期決着の難しさをにじませた。

 安倍晋三首相は昨年11月にシンガポールで行ったプーチン大統領との会談で交渉の加速化に合意した。通算25回目となった1月のモスクワでの会談では外相らに交渉の前進を指示した。

 だが、ラブロフ氏やロシアのトルトネフ副首相らは領土問題について「議論していない」といった発言を繰り返している。大統領の権限が強大なロシアでは、閣僚とはいえ独自の言動は考えにくく「プーチン氏の意向が働いている」(日本政府関係者)とされる。

 首相は日露交渉の6月の大筋合意を目指すが、直後に参院選を控える。参院選は日露交渉で鬼門となった因縁がある。

 平成10年、エリツィン大統領と静岡県伊東市川奈で4月に会談した橋本龍太郎首相(いずれも当時)は「北方四島の北側で国境を画定した上で当面はロシアによる四島への施政権を認める」と非公式に提案し、エリツィン氏も前向きな反応を示した。「最も領土問題が解決に近づいた会談」(政府関係者)だったが、7月の参院選で自民党が惨敗した結果、橋本氏は退陣し、提案は幻に終わった。

 参院選は政権選択の選挙ではないが、こうした歴史も踏まえ、ロシア側は今夏の参院選までは交渉を急がず、遅延戦術に出てきたとの分析がロシア専門家の間に出ている。

 首相の自民党総裁の任期は平成33(2021)年9月まで。プーチン氏の大統領任期は2024年まであり、首相以上に交渉を急ぐ理由はなく、この点でも交渉はロシア側が優位に立っているといえる。

産経新聞
2019年2月17日 21時38分
https://www.sankei.com/politics/news/190217/plt1902170010-n1.html