厚生労働省が8日発表した毎月勤労統計(速報)によると、物価変動の影響をのぞいた2018年の実質賃金は前年比0.2%増だった。2年ぶりのプラス。ただ、17年と18年の調査で同じ事業所だけを比べる基準(参考値)の公表は見送った。実態に近い参考値はマイナスになった公算が大きく、野党は反発を強めそうだ。

18年の現金給与総額(名目賃金)は月平均で32万3669円。17年に比べ1.4%増えた。このうち、賞与など特別に支払われた給与が5万9036円で3.7%増え、全体を押し上げた。基本給を示す所定内給与は24万4733円で0.8%増だった。18年の消費者物価指数は1.2%増で、賃金が物価の伸びを上回った。

毎月勤労統計では従業員500人以上の事業所を全て調べると決まっている。ところが厚労省は東京都で調査対象となる約1400のうち、3分の1しか調べていなかった。中小企業に比べれば賃金の高い大企業が抜けていたため、04〜17年は実際よりも統計結果の賃金が低くなっていた。厚労省は18年調査から補正をかけて実態に近づけ、17年対比で伸び率がかさ上げされやすくなった。

厚労省は実質賃金の参考値を公表しない理由について「対象事業所の入れ替えが続くため長期で比較できない」(雇用・賃金福祉統計室)と説明している。18年の実質賃金を簡便な手法で試算すると、マイナス0.4%程度になる。総務省統計委員会は景気指標として参考値を重視する見解を示している。

野党は18年1〜11月を対象に独自試算した実質賃金などをもとに「賃金偽装だ」と批判してきた。18年通年の実質賃金がプラスになったとする厚労省の発表に反発を強めそうだ。

日本経済新聞
2019年2月8日 8:30
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41053210Y9A200C1MM0000/