厚生労働省の基幹統計「毎月勤労統計」の不適切調査で、厚労省の有識者会議「毎月勤労統計の改善に関する検討会」が平成27年9月にまとめた中間報告書に、従業員500人以上の事業所は「全数調査」と明記されていたことが3日、分かった。当時は東京都内分を抽出調査に切り替えていたが、検討会で厚労省が全数調査を行っていると説明し、結果的に虚偽記載につながったとみられる。有識者がまとめる報告書を使う形で、抽出調査を隠蔽(いんぺい)しようとした可能性もある。

 厚労省は同統計をめぐり、16年から15年間にわたり従業員500人以上の都内の事業所は抽出調査を行っていたが、中間報告には調査方法について「常用労働者規模30人以上の調査対象事業所については、一定期間経過後に総入れ替え(規模500人以上の事業所については全数調査)を実施」と明記された。

 議事録によると、厚労省の担当課長は27年6月に行った第1回検討会で「500人以上の事業所は基本的には1分の1で当てているので、500人以上の事業所は常に当たっている」と説明した。「1分の1」とは全数調査を意味する。有識者が「500人以上は全数というか1分の1であるということでした」と念押しすると、今度は課長補佐が「500人以上は1分の1」と明言した。

 担当部長は同じ検討会で「信頼性の高い統計を作り、さらに、国民にとっても分かりやすい統計が大事だ。改善できるところは改善していく」と説明した。その言葉と裏腹に、課長と課長補佐がそろって、抽出調査に切り替えたことを伏せていたことになる。

 厚労省は28年10月、総務省に対し、大規模事業所は全数調査を継続すると明記した書類も提出している。

 厚労省が15年7月に作成した毎月勤労統計の調査マニュアル「事務取扱要領」には、大規模事業所について「東京都に集中しており、全数調査にしなくても精度が確保できる」と記した。しかし、27年1月分から利用された要領では、抽出調査を容認する記述を削除していた。

 今回、同省が有識者会議にも虚偽の説明を行っていたことが明らかになり、組織的に隠蔽した疑いがさらに高まった。

産経新聞
2/4(月) 7:42配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190204-00000503-san-soci