改正出入国管理・難民認定法(入管難民法)が成立したことを受け、外国人労働者受け入れの基本方針が25日に閣議決定された。同法は先の臨時国会で12月8日未明に成立したことが記憶に新しいが、労働力不足が懸念される中、単純労働を含む業種でも外国人労働者の受け入れを拡大する内容だ。ただ省令で定める点が多いとの指摘や、国会での議論が十分に尽くされていないとの見方もある。衆院法務委員会の野党筆頭理事だった立憲民主党の山尾志桜里衆院議員に、今回の国会での法案審議や外国人受け入れへの考え方などについて聞いた。

「ローメイクは後から内閣がするとの宣言」

 山尾氏は「国会は死んだ。議論の場としての機能を失った」と強い言葉で政府・与党の国会対応や運営を批判した。唯一の立法機関と憲法で規定されている国会だが、「(立法・行政・司法の)『三権』の三角形から国会が消えた感覚がある。法案が通った後に、本来は法律で決めるべきところを、大臣が決める省令で『後から詰めます』という話。『もはやローメーク(立法)は国会でするのではない。内閣が後からさせていただきます』という宣言に等しい国会運営」と述べた。

 改正入管難民法の審議は、「時間」と「中身」の面で問題があったと訴える。11月21日に衆院で実質審議入りした法案は3週間弱で成立。衆参両院の法務委員会での審議時間は計38時間にとどまった。特定秘密保護法で60時間超、安保関連法では200時間超だったが、それらに比べても短い。

「国会で議論し、その議論がメディアを通じ、社会に伝播していく。そして社会からの反応を国会が受け取る。そこにはタイムラグがあって、一定の時間が必要。とても1か月では伝わらない」

 法律の中身についても「詳細は省令で定める」点が目立ったという。「単純労働は何か、存在するのかも決まっていない。あるいは新しい永住ルートにつながるのかどうかも決まっていない。ただ『外枠』だけをつくって、中身を詰めずに法案を国会に持ってきた」

 入管難民法の審議では、技能実習生が失踪した動機などでも法務省のデータにも誤りがあり、野党の反発を招いた。

外国人受け入れには「覚悟が必要」

 日本では、これまでいわゆる「単純労働」分野での外国人就労は原則禁止とされてきたが、今回の法改正で「特定技能」という新たな在留資格を創設して、外国人労働者の受け入れを拡大する。山尾氏は「国の形を変える大きな変化」だといい、もう少し腰を据えた議論が必要だったと語る。

「日本はすでに国際標準でいうと“移民国家”。でもそれを政治的に否定したいがために、移民国家としてあるべき政策を取ってこなかった。本当は、今回の政府からの問題提起は、この問題に真面目に取り組もうというシグナルであれば、悪いことではなかった。通常国会を中心に、半年なり1年なり、しっかり時間をかけて議論するべき事柄だった。残念なのは、あえて(期間の)短い臨時国会に(法案を)持ってきて、中身を詰めずに議論のボールを(国会に)与えないところだった」

 政府・与党への批判ありきとの見られ方をされがちな野党だが、より良い政策形成のために法案のいい面と悪い面を国会で明らかにした上で、各党で国家観をぶつけ合えばよいと強調する。

「どんな政策でも、メリットもあればデメリットも必ずある。それらをリスト化するという実務的な作業は、本来(法案を)提案する側も、指摘する側も共通でできる。きちんとメリットとデメリットを共有できれば、その上で目指す社会像の違いや、自身の哲学の違いによって、どの道を選択するかはそう喧嘩にはならないはず」

 一方で、今回の法案審議への自身を含めた野党の対応については、反省点があるという。「与党の急ごしらえな法案ではあったが、それにきちっと打ち返せるだけの、むしろ土俵を野党の側に持ってくるだけの準備も十分ではなかった」

 さらに山尾氏は、欧州や米国などでの移民問題の現状を踏まえ、外国人の受け入れには「覚悟が必要」だと警告する。

「移民問題は生易しいものではないし、理想だけで済む問題ではない。(新制度によって日本に来る)外国人が永住していく人たちなのかも、われわれも来る人も分からずに受け入れなければならない。それぞれ覚悟がないまま、続けていったときに、どこかでこの国に分断が起きるのではないか。排除の論理が幅をきかせるようなことがあるのではないか」

THE PAGE
2018/12/31(月) 20:30配信
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