この間、私は韓国による火器管制レーダーの照射問題を取り上げてきましたが、どうにも嫌韓思想が根底にあるとしか思えないような人たちからの好戦的なものばかりが目につきます。

 いずれにせよ、国家間の問題を個人の問題と同列に考えてしまっているものは論外ですし、それではトランプ米国大統領と何も変わるところがありません。個人の感情レベルで国家を運営するなんて危険極まりないものです。

 どうにも安倍晋三氏にも共通するところがあって、自らの私的な感情や主義主張、そればかりがプライベートな利害まで優先させてしまうのですから、このように安倍氏のような自民党政権はなかったように思います。

 つまり、今回の問題も安倍氏でない自民党政権であれば、ここまで日韓関係をグチャグチャにしてしまうこともなかったでしょう。出だしから、もっと考えるべきだったんですけれど。

「渋る防衛省、安倍首相が押し切る=日韓対立泥沼化も−映像公開」(時事通信2018年12月28日)

「韓国駆逐艦による海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題をめぐり日韓の主張がぶつかる中、防衛省が「証拠」として当時の映像の公開に踏み切った。同省は防衛当局間の関係を一層冷え込ませると慎重だったが、韓国にいら立ちを募らせる安倍晋三首相がトップダウンで押し切った。」

 個人的な感情を政治にそのまま反映させてしまうというのは、やはり政治家としては失格なわけです。

 国家間の問題は個人のケンカじゃないのですから、極端な話、戦闘機が撃墜されったって戦争にはならないわけですね。

 トルコがロシア機を撃墜(2015年11月24日)しても、戦争になるわけでもありません。戦争となるには、相応の政治的な意思決定があり、偶発的なことでは戦争に至ることはありません。

 嫌韓思想の持ち主たちは、韓国なら攻撃を仕掛けてきても不思議はないとか、韓国に断固たる姿勢だとか、制裁だとか、何だか本気で危ない発想です。

 今回の件も韓国政府の意思に基づくものとは到底、思えないし(現場の判断であれば韓国側が故意にやったものとは評価されませんよ)、しかも自衛隊哨戒機が敢えて接近したのであれば挑発したのは自衛隊側かもしれません。

 いずれにしても日韓関係をグチャグチャにしなければならないほどの問題でもないわけですね。それこそ安倍氏が大好きな「未来志向」でこうした軍事的緊張(というほどでもなく、むしろ煽っているだけなのですが)を緩和させていくべきなのです。

で、私に対しては何で韓国の肩を持つのかとか、自衛隊が同じようなことを韓国にしたら怒るだろとか、まあトンチンカンな批判もやってくる始末。

 別に韓国の今回の行動(火器管制レーダーの照射)が正しいというわけではなく、それを擁護するという話ではないのですが(私は韓国側が正しいなんて一言も言っていませんよ)、日本政府の対応を批判すると、何故か韓国の肩を持つと話がすっ飛んでしまうのですよね。

 私は今回の事件に対する日本政府(安倍政権)の対応を問題にしているのであって、それが韓国の肩を持っているなどと話を飛躍してしまうのは嫌韓思想に凝り固まっているからでしょう。

 ここまで大事にしてしまったのは安倍政権ならではだし、あえて緊張関係など作り出す必要もないのに、何故、こんなトランプ大統領レベルのことをしなければならないのか、ということが問われているわけです。

 日韓経済を考えても無駄そのものなんです。

 こうした韓国批判の声ばかりが大きくなっていくのは良い状況とはいえず、私たちは冷静になる必要があります。

BLOGOS
猪野 亨
2018年12月30日 20:21
https://blogos.com/article/348405/