年末年始を地元で過ごす自民党議員が「例年になく憂鬱だ」とこぼしていた。臨時国会で、国民の反対が強い入管法改正や水道法改正を強引に成立させたことで、地元の有権者から突き上げを食らうのは必至だからだ。

「多くの議員から『地元でどう説明していいか分からない』『実は自分も内容を理解できない』という声が上がっていました。消費税増税の対策も複雑で分かりづらいという批判がある。そこで、有権者から特に厳しい意見が出そうな法改正などについて、政務調査室と広報本部が説明用の政策パンフレットを作成。所属議員に配布されました」(自民党関係者)

 日刊ゲンダイはこのパンフレットを入手。内容は出入国管理法改正、水道法改正、漁業法改正、消費増税対策の住宅購入支援と自動車関連の減税についての5項目で、A4サイズで計16枚のペーパーだ。Q&A方式の想定問答も書かれている。 

 最も分量が多いのが出入国管理法改正のQ&Aで、6ページに及ぶが、中身はお粗末きわまりない。例えば、「在留資格の創設は『事実上の移民解禁』では?」という問いへの模範解答はこうだ。

「安倍総理は国会審議の中で、『いわゆる移民政策を取ることは考えていない』と明言しています」

「安倍総理が言ったから」なんて、何の説明にもなっていない。

■子供だましが通用するはずなし

「将来、日本人の職が奪われてしまうのでは?」という不安には「国内の景気変動などで、外国人材の受け入れが必要でなくなった場合には、受け入れを一時的に停止する規定を設けています」と回答。安倍首相は国会審議で「雇用の調整弁ではない」と答弁していたはずだが……。法務省に問い合わせると「条文に受け入れ停止の規定はありますが、景気については書かれていません」(入国管理局総務課)とのことだった。

 水道法改正についても、「民間事業者に運営を任せると水道料金が高騰しないか?」「安全性に問題が生じないか?」などという問いには、すべて「厚生労働大臣が内容を確認した上で、許可する仕組みになっている」と説明。到底、納得できるものではない。

 驚くのは、自動車関連の減税を説明するペーパーに「(消費税が上がる)10月以降に買う方が断然トク」と書いてあることだ。「燃費基準達成、排気量996t、車両価格(税抜き)135.5万円の自動車の場合」を例に、購入時に納める税が1万7000円減り、自動車税が年間4500円減るとしているが、消費税2%アップによる負担額は約2万7000円だ。こんな子供だましが通用すると思っているのか。この程度の優遇策で来年10月まで買い控えられたら、自動車業者もたまらないだろう。

 苦し紛れの言い訳が並ぶパンフレットが、これらの政策のデタラメぶりを物語っている。

日刊ゲンダイ
2018/12/29
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/244687/