文部科学省が昨年、大学の評価のために米国から2人の委員を招いた際、1日あたり約50万円の謝礼を求められたものの、国の基準の約2万円しか支出できず、差額分をベネッセホールディングスの関連法人が負担していたことが関係者の話で分かった。文科省の担当者からはベネッセ側に対し、渡航費の一部も含めて計約416万円の支出を求めるメールが送られていた。文科省は内部監査の結果、「強要も便宜供与もなく問題なかった」と結論づけたが、識者は「癒着を生む恐れがある構図だ」と指摘する。

 ベネッセは教育関連の大手で、文科省が小中学生を対象に行っている全国学力調査の採点や集計をグループ会社が請け負っている。2020年度から始まる「大学入学共通テスト」の英語民間試験にも参入するなど、文科省と様々な場面で関係を結んでいる。

 文科省によると、教育研究で世界レベルを目指す「指定国立大学」を選定するため、昨年5月から6月にかけて指定国立大学法人部会を開催。海外の有識者の意見も反映させようと、カリフォルニア大バークリー校名誉学長とエール大名誉学長を、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の上山隆大議員の紹介で招いた。

 国の規定では、こうした委員に対して支払える手当は1日1万7700円。文科省やベネッセの説明によると、両氏は出席を内諾したが、「その金額では行けない」として1日50万円を提示。上山氏の提案で文科省がベネッセ側に協力を依頼し、ベネッセ側も「助言をもらう目的」で支払いを決めたという。

 ベネッセは実際に支出した額を明らかにしていないが、朝日新聞が入手した、文科省の係長が昨年5月25日にベネッセ側に送ったメールの添付ファイルでは1日当たりの「謝金」が50万円とされていた。さらに、文科省が支払う額を引いた「滞在費不足分」は約31万円、「航空券不足分」は約35万円と記載され、計約416万円を「ベネッセ様からお支払いいただきたい額」と示していた。2人の委員は指定国立大学法人部会に参加し、うち1人はその一環で京都大や大阪大、名古屋大も視察した。

 文科省は弁護士なども参加した監査の結果、ベネッセ側と支出を分担したことは問題ないとしたものの、メールの表現は「強要と誤解されるおそれがある」と判断。また、ベネッセ側がいくら支払ったのか、文科省に書類が残っていない点も問題だとして、民間企業などと費用を分担する際は書類を残すよう求める、会計課長名の通知を18日、省内に出した。

 ベネッセホールディングス広報・IR部は「金銭面で単純に当社が負担することについては適切ではない」とする一方、「著名な教授から教育改革に関するグローバルな知見を得られることは非常に有益だと考えた」とし、謝金などのために支出したことは認めた。(峯俊一平、増谷文生)

■「癒着生まれる恐…

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朝日新聞
2018年12月19日2時0分
https://www.asahi.com/articles/ASLDL5QBTLDLUTIL045.html