いつかどこかに大きなシワ寄せがくるのではないか。

 そんな不安が安倍政権にはつきまとう。1つは蔑ろにされ続ける財政健全化であり、もう1つがアメリカからの兵器“爆買い”である。

「巨額の貿易赤字は嫌だ」とシンゾーに言うと、「日本がすごい量の防衛装備品を買ってくれることになった」――。

 9月26日に行われた日米首脳会談の後、トランプ大統領が嬉々として吹聴したこのセリフに、日本国内の防衛・及び防衛産業関係者は大いに落胆したことだろう。

■アメリカが「売りたい兵器」を買うことになる

 それぞれに思惑は違う。

 防衛関係者にしてみれば、「買いたい装備」ではなく、アメリカが「売りたい兵器」を買うことになることが目に見えているからだ。

 一方の防衛産業関係者にしてみれば、ただでさえ小さくうま味のないパイが縮小される未来が見えるからだ。

■5年前の約6倍に

 そんななか「東京新聞」は11月29日付紙面のトップで〈防衛省 支払い延期要請〉と報じた。サブタイトルには、〈米兵器ローン急増 来年度予算圧迫〉とある。

 要するに、防衛装備品代金の支払いを2年から4年延期してほしいと防衛省が国内業者に要請したという趣旨の記事だ。延期要請の理由は、〈高額な米国製兵器の輸入拡大で「後年度負担」と呼ばれる兵器ローンの支払いが急増〉したことだという。

「ドナルド」、「シンゾー」と呼び合う仲を維持するため兵器を“爆買い”していることは何となくわかってはいても、それが5年前と比べて約6倍(対外有償軍事援助のローン残高)にもなっているとは驚きである。

 日本の安全保障が日米同盟の上に成り立っていることを考慮すれば、それも仕方のないことだが、いよいよ国内防衛産業への支払いを延期となれば新たなレベルでの対米依存に突入することを意味する。

 はたして日本の政治家や専門家に、その意識はあるのだろうか。

■「これを買って使え」とばかりに空から兵器が降ってくる

 残念ながら、そうではなさそうである。

 平和憲法をいただく国として、その特殊性の上に、どんな装備が最も適しているかを考えながら編まれるのが中期防衛力整備計画であるが、米兵器の“爆買い”は中期防に沿って行われるのではないからだ。アメリカからこれを買って使え、とばかりに空から兵器が降ってくるのだ。

 これは料理に例えれば、料理を決めてレシピを書いた後で、勝手にこの食材を買ったから使え、と高価な食材を押し付けられて、別の食材用の予算が削られてしまったようなものだ。

 日米同盟の重要さは言うまでもないが、日本が独自の外交を維持するためにも一度立ち止まって考えるべき時を迎えているのかもしれない。

私が聞き手を務めた元中部方面総監・山下裕貴氏のインタビュー「トランプの言いなりで兵器を買うな」(「文藝春秋」1月号掲載)は、そのことを考える絶好の材料を提供してくれている。

文藝春秋 2019年1月号
http://bunshun.jp/articles/-/9982