「危険です。安倍首相はプーチン大統領と23回も会談していますが、KGB(旧ソ連の秘密警察・国家保安委員会)出身のプーチン氏と交渉し、やり合うのは容易ではなく、博打(ばくち)になります。失敗すれば日本が失うものは大きいでしょう」(グローバルエコノミスト・斎藤満氏)

 北方領土問題が急展開を迎えている。きっかけは11月14日、シンガポールで安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が会談を行い、その後に首相が「私とプーチン大統領の手で、(領土問題に)必ずや終止符を打つ」と宣言したからだ。

 択捉(えとろふ)、国後(くなしり)、色丹(しこたん)、歯舞(はぼまい)群島のいわゆる「北方四島」の返還は日本の国家的な悲願。だが、交渉相手のプーチン大統領は、謀略と実行力を兼ね備えた世界屈指の曲者であり、あまりに手強い。

「ロシア国内での支持率を上げるため、『国民の目を外に向ける』という、安倍首相もよくやる手を使っているだけ。今回も首相が踊らされるだけで何も進展しないという、狼少年的なパターンだと思います。プーチン大統領のホンネは『一島たりとも返すつもりはない』、でしょう」(国際ジャーナリスト・山田敏弘氏)

 プーチン氏の狙いは、「日本からできる限りカネを引き出すこと」だ。1956年の日ソ共同宣言によれば、両国間で平和条約が結ばれれば、その後に歯舞、色丹の二島が日本に返還されることになっている。プーチン氏はその「約束」を逆手に取り、安倍首相を手玉に取っている。

「『ただし返還しても、主権を渡す必要はない』という趣旨のことをプーチン氏は言い出して日本政府を混乱させている。安倍首相は来夏の参院選のため、何としてでも外交で点数稼ぎをしようと必死です。プーチン氏はそれを見切り、『日本を揺さぶれば北方領土の値段を吊り上げられる』と考えている」(外務省関係者)

 巨額のカネを出させて平和条約を結び、結局は返さない。「そんなバカな」という話だが、それが罷(まか)り通るのが国際政治であり、強行できるのがプーチン氏だ。

「答えや結論を急ぐあまり、安倍首相は足元を見られている。したたかなプーチン氏の手腕の前に、首相はこれまで何一つ成果を上げていない。沖縄の基地問題では自国民に強硬な態度を取るのに、プーチン氏になぜそれができないのか」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)

 指導者の「胆力」が違っては、領土を守り、取り戻すこともできない。

 PHOTO:代表撮影/ロイター/アフロ

FRIDAY
12/4(火) 7:03配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181204-00010000-friday-pol