安倍政権がロシアとの北方領土交渉で、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用する国民の虎の子の「年金資産」を“バーター材料”として差し出そうしていた――。ロイター通信がこう報じ、外交関係者が驚愕している。

 記事は今月9日にロイターが英文で配信した「スクープ:海外投資家がロスネフチ株取得をためらったため、ロシア中央銀行が売却取引に極秘融資」というもの。2016年12月にロシアの国営石油会社「ロスネフチ」の株式19.5%が、カタールの投資ファンドなどに売却された経緯と水面下の動きについて詳報しているのだが、そこにナント日本政府が登場するのである。

 当時ロシアは、原油価格暴落と経済制裁により国家予算が逼迫、ロスネフチ株の一部売却で赤字補填する計画だった。ところが売却先に難航する。記事にはこうある。

<セーチン(ロスネフチ社長)が証人となった株売却とは無関係の裁判に提出された会話の録音によると、次にセーチンは目を東にやり、日本の政府関係者と交渉を始めた。交渉は主に日本の経済産業省の世耕弘成大臣を相手に複数回行われた>

<取引が成功していたら、ロスネフチ株の取得者は1.4兆ドルもの資産を持つGPIFのような日本の公的投資基金か国営の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)になっていた、という>
<裁判で再生されたセーチンの会話によると、日本が取引を第2次世界大戦終結時からのロシアとの領土問題の進展にリンクさせようとしたため、取引は行き詰まり、結局、流れてしまった>

 セーチン社長はプーチンの長年の側近とされる。日本政府との株売却交渉が行われたのは16年秋のことであり、同年12月、プーチンがわざわざ安倍の地元である山口を訪問する計画になっていた。

官邸事情通が言う。

「2016年秋当時、何度も来日したセーチン氏と、当時の世耕経産相が官邸などで会っていました。それが、ロスネフチ救済のための交渉で、プーチン大統領の訪日時に北方領土交渉を前進させる見返りにしようとしていたとは……」

 レガシーづくりという個人的な“手柄”のため、今「2島先行返還」に前のめりになっている安倍首相だが、既に2年前に、国民の年金資産まで利用しようとしていたわけだ。私物化が甚だしい。

日刊ゲンダイ
2018/11/20 06:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/241980/