■「競争から協調へ」 安倍首相が李首相と会談、来年の習主席訪日要請

 【北京=原川貴郎】中国を公式訪問中の安倍晋三首相は26日、北京市の人民大会堂で李克強首相と約1時間、会談した。安倍首相は会談冒頭で「今回の訪中から習近平国家主席の日本訪問とハイレベルの往来を間断なく続け、さらに日中関係を発展させたい」と述べ、習氏の来年の来日を求めた。李氏は賛意を示し、安倍首相の来年の訪中を要請した。安倍首相は26日午後、習氏との会談に臨む。

 安倍首相は会談で「競争から協調へ、日中関係を新たな時代へ押し上げたい」と強調した。会談後、李氏と共同記者発表に臨み、東シナ海を平和、協力、友好の海にしていくために前進していくことで一致したと説明。自衛隊と中国軍の偶発的な衝突回避のための相互通報体制「海空連絡メカニズム」のホットラインの早期開設に取り組む方針を確認したと明らかにした。同メカニズムの下での防衛当局者による年次会合を年内に開くことでも合意した。
 また、東京電力福島第1原発事故以来続いている日本産食品輸入規制について、中国側が「科学的評価に基づいて緩和を積極的に考える」と説明したと述べ、歓迎の意向を示した。北朝鮮の非核化については「引き続き責任を果たすことで一致した」と語った。
 両氏は会談で、今後5年間で3万人規模の青少年の相互訪問や交流を実施することで一致した。日本側は訪日中国人に対するビザ発給要件を緩和することを決めた。相互交流促進の一環で、従来は中国教育省直属の75の大学の学生や卒業生(卒業3年以内)に限って一次ビザの申請手続きを緩和していたが、対象大学を1243校に拡大する。また、過去3年間に2回以上個人観光ビザで訪日した中国人を対象に、数次ビザを申請する手続きを簡素化する。来年1月1日から実施する。

金融危機時に互いの通貨を融通し合う通貨スワップ(交換)協定を中央銀行間で締結したことも発表した。両国の金融システムの安定が目的で、上限額は平成25年に失効した旧協定の10倍の約3兆円規模とする。李氏は「日本と通貨スワップ協定を締結し金融協力を強化することは双方の市場の安定につながる」と述べた。
 両氏は成果文書の署名式にも立ち会った。両国は周辺海域での救難の際の協力の円滑化・効率化を図る海上捜索・救助(SAR)協定の締結に合意した。協定は平成23年12月、日中間で原則合意に達していたが、その後、旧民主党政権による尖閣諸島(沖縄県石垣市)の国有化で両国関係が冷え込んだ影響で、締結には至っていなかった。安倍首相は共同記者発表で、日中が「互いに協力のパートナーで、互いに脅威とならない明確な原則を確認した」と強調した。
 イノベーションや知的財産分野での政府間協力を話し合う枠組みとして「日中イノベーション協力対話」を創設することでも一致した。

産経新聞
2018.10.26 14:49
https://www.sankei.com/politics/news/181026/plt1810260020-n1.html