作家の室井佑月氏が日本に広がる同調圧力を嘆く。

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 安倍首相は国民にどう思われようが関係なくなってきてない? 第4次安倍改造内閣のメンバーの顔ぶれを知ってそう思った。いいや、正直いうと喧嘩を売られているようにさえ感じた。

 疑惑や問題が発覚してもそれを力でねじ伏せうやむやにし「禊(みそぎ)は済んだ」とか勝手にいってそうなワルの親玉、親分にヘイコラするためならヘイトスピーチ紛(まが)いの発言も厭(いと)わない、ってか、厭うような頭もない超小物。あ、狙ってそういう発言をし、のし上がった化け物もおったわい。

 経済学者の金子勝先生のTwitterに、

<昔の自民党への郷愁から60年間のブランディングを信じて自民党に投票している人も多い。だが、ここにあるのは昔の自民党ではない。実際、安倍内閣は、ほぼ全員、極右改憲派の日本会議メンバー。ついに自民党は極右カルト集団に乗っ取られたのだ>

 と書かれておった。方々から批判を受けたみたいだが、あたしは直球、ストレートな言葉だと思った。

 日本会議はいくつか、親和性が高いフロント団体を持っていて、いろんな分野の活動をしている。たとえば、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」「放送法遵守を求める視聴者の会」「神道政治連盟」などだ。会員も重なっていたりする。

 これらの人々に自民党は乗っ取られたと金子先生はおっしゃるが、自民党が乗っ取られるということは、この国が乗っ取られたといってもいいのかもしれない。

 神道政治連盟は、新憲法制定、皇室と日本文化の尊重、靖国神社の国家儀礼確立、道徳・宗教教育の推進などを訴えている。

 だが、「週刊ポスト」10月12・19日号の記事によれば、今年3月に第12代靖国神社宮司に就任した小堀邦夫氏は、

「陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖国神社は遠ざかっていくんだよ」「今上陛下は靖国神社を潰そうとしてるんだよ」

 と驚きの天皇陛下批判をしている。

 ガセネタじゃない。音源も残っているもの。

 つまり彼らは、都合の良いように天皇陛下や皇室を利用したいだけ。自分らの都合に合わなければ、陛下にさえ文句をいう。

 憲法学者の小林節先生は、日刊ゲンダイのコラムの中でこういっていた。

「(LGBTをめぐる『新潮45』の)小川論文こそが日本会議的な同調圧力の一環であろう。それは、自分たちと意見が違う人々を、権力、圧力、暴論を使ってでも従わせようとする風潮である。それは、各人の人格的自律を奪い、自由と民主主義を破壊する動きである(後略)」と。

 大手メディアはいつまでこういったことに目を瞑(つぶ)りつづけるの。怖いと思うから怖いのだ。この国がカルト団体に乗っ取られるなんて、大問題でしょ。

 メディアはこれまで、小さな団体の些細な問題として取り上げていた、というかそういう逃げ方をしていた。だが、その逃げ方はもう無理だと思う。

※週刊朝日  2018年10月26日号
https://dot.asahi.com/wa/2018101700027.html