トランプ大統領から仕掛けられた「日米貿易戦争」――。早くも安倍政権が「白旗」を揚げてしまった。年明けにスタートする「日米交渉」について、担当の茂木敏充経済再生担当相が、毎日新聞(15日付)のインタビューで<TPPの水準を超える譲歩>を口にしているのだ。

 9月末に行われた日米首脳会談。共同声明には<農林水産品については、TPPに代表される過去の協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限>と記載され、安倍政権も、過去最大の譲歩であるTPP以上の条件は認めないとしていた。

 ところが、茂木は「最大限ということは全体としての話」などと平然と語っているのだ。毎日新聞も<日米交渉 一部TPP超え譲歩も>と見出しを打っている。

 あれほど「TPP以上の譲歩はしない」と強調していたのに、日本国民をだまし討ちにした形だ。もし、TPP以上の市場開放を承諾したら、日本の農業は壊滅的な打撃を受ける。

安倍政権が「白旗」を揚げたのは「自動車への追加関税」と「為替条項」という2つで脅されたからだ。実際、トランプが訴えるように「自動車」に25%の関税をかけられたら、日本の自動車産業は2兆円のコスト増となり、日米FTAに「為替条項」が盛り込まれ、為替が現在の1ドル=112円台から購買力平価である1ドル=99円まで「円高」が進んだら、日本企業は2兆円以上の利益が吹き飛ぶ。

 外交評論家の天木直人氏が言う。

「そもそもトランプ大統領がTPPから離脱したのは、TPPでは満足せず、それ以上のモノを求めたからです。日本にTPP以上の譲歩を求めるのは、目に見えていました。アメリカは日本の急所が“自動車”と“為替”だと見抜いています。事あるごとに、この2つで脅してくるでしょう。本番は11月の中間選挙が終わった後です。もし、負けたら、2年後の大統領選で勝利するためには成果を上げる必要があり、日本に無理難題を押しつけてくるでしょう。日本が“自動車”と“為替”を守るためにやれることは、農業を犠牲にすることと兵器を大量に買うことくらいです。それでも足りなかったら、トランプ大統領は“円高”にするよう迫ってくるはずです」

 どこが「外交の安倍」なのか。

日刊ゲンダイ
2018/10/18 06:00
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