東京新聞がロイター通信の配信を引用し、次のような衝撃的なニュースを報じた。

〈ロス米商務長官は5日、ロイター通信とのインタビューで、米国が日本に対する巨額の貿易赤字を減らすには『自動車の生産を米国に移管するのが最善の方法だ』と指摘。日本メーカーが現地生産を拡大すべきとの考えを示した〉

〈日米は9月末、2国間の通商交渉の開始で合意しており、ロス氏は『交渉で(赤字を減らす)方法は決まるだろう』と述べた。日本の対米輸出のうち、自動車関連は昨年、5兆5000億円と輸出全体の3分の1を占めており、米国が抱える7兆7000億円の対日貿易赤字の大きな要因になっている〉

〈日本の自動車メーカーは昨年時点で377万台を米国で現地生産しているが、日本から輸出している分も174万台ある。米国での生産を拡大した場合、輸出分が減り、国内の生産や雇用が縮小する懸念もあることから、メーカー各社は厳しい決断を迫られることになる〉

 私はこれまでも、トランプの「米国を再び強く(MAKE AMERICA STRONG AGAIN)」の主要な標的は中国と日本であると指摘してきた。ところが、国内の主要メディアは、安倍首相とトランプ大統領が個人的な関係を築いてきたことを理由に、さも日本が標的にならずにすんでいるような報道を続けてきた。

 米国はすでに、メキシコ・カナダと関税交渉し、北米内で調達すべき部品を75%にする―――との内容で合意したが、その標的はメキシコ・カナダで現地生産する日本車である。

 最終的な決着内容は分からないが、輸出全体の3分の1を占めている品目の輸入が何らかの形で制限されようとしているにもかかわらず、日本のメディアはなぜ、沈黙しているのだろうか。

 ロス米商務長官がインタビューで日本車の将来に言及したのはロイター通信だ。ポンペオ米国務長官が北朝鮮との会談で拉致問題を取り上げる、といった報道ばかりしている日本の大手メディアは一体、何をしているのか。安倍首相に都合の悪いニュースは国民に知らせない姿勢の官庁と大手メディアの責任は極めて重い。

日刊ゲンダイ
2018/10/13 06:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/239380