ヘイトスピーチを規制し、性的少数者(LGBTなど)への差別を禁止する東京都の人権条例案が5日、都議会本会議で可決・成立した。来年4月に全面施行する。ヘイトスピーチ対策で公的施設の利用制限ができるようになるが、有識者から表現の自由の侵害や恣意(しい)的な運用を懸念する声も出ている。

 条例は、2020年東京五輪・パラリンピックを見据え、いかなる差別も禁じた「五輪憲章」の理念を実現するのを目的に掲げる。

 特定の人種や民族に差別的言動を繰り返すヘイトスピーチを防ぐため、知事が定める基準に従い、公的施設の利用を制限できる。ヘイトスピーチやヘイトデモをした団体・個人名を公表し、その様子を収めたネット上の動画の削除要請も可能とした。ヘイトスピーチに当たるかどうかは学識経験者らでつくる第三者機関が審査する。

 性的少数者への差別禁止については、事業者に差別解消に努めるよう求める。

 条例案は、都民ファーストの会、公明、共産両党などが賛成。自民党は「知事の政治的パフォーマンスだ」などと反対した。

 元上智大教授の田島泰彦さん(メディア法)は「ヘイトスピーチは現行法でも対処する方法があるはずだ」と指摘。施設の利用を制限する基準ができる前に条例が成立したことについては「恣意的に運用がされる恐れがある。言論や集会の自由にかかわる重要な問題の判断を、議会が知事に白紙委任したに等しい」と批判した。

【竹内良和】

毎日新聞
2018年10月5日 21時25分
https://mainichi.jp/articles/20181006/k00/00m/040/127000c