ああいうかたちで、4月末に新潟県知事を辞めた現在の私が、他人に何かを言う資格がないことは、私自身がよく分かっておりますし、「物言えば唇寒し」で、それ自体、非常に気がひけることです。

 しかし、私は生まれてこの方、自民党に所属していた時ですら、「リベラル」を自認してきました。「リベラル」ということさえはばかられるような現在の政治状況を眼前にし、そうした状況を作ってしまった責任の一端を負うものとして、野党統一候補として新潟県知事に当選した時から、短いながらの地方政治を実際に体験する中でずっと考えてきた「リベラル復権の鍵」について、一言お伝えしたいと思い、恐縮ながら筆を取りました。

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■保守とリベラルは鏡に映った右左

「我こそはリベラル」と思う方の多くは、おそらく安倍政権を嫌いでしょう。しかし、好き嫌いはともかくとして、政治、特に小選挙区制で選挙に勝つこと、を考えた場合、安倍政権がとっている政治戦略は、極めて有効かつ合理的に見えます。

 これも大変恐縮な言い方なのですが、自民党(2005年の郵政解散選挙、2009年の政権交代選挙で、私は自民党公認として民主党の田中真紀子氏と選挙を戦っています)と、野党陣営(2012年の衆院選、2013年の参院選を日本維新の会で戦ったのち,維新の党と民主党の合流により2016年から民進党に所属しました)の双方に属したものとして、私は「保守とリベラルは鏡に映った右左」であり、リベラルの側が安倍政権のとっている政治戦略を左右逆転した「鏡像」として参考にすることこそが、リベラル復権戦略の鍵であると思っています。

■安倍政権の政治戦略の三つのポイント

それでは、安倍政権の政治戦略の特徴は何でしょうか。私はポイントは三つあると思います。それは、
1.極端な右派への「戦略的寛容」
2.中道左派政策の取り込み
3.中道を越えた左派への「戦略的批判」
です。

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 議論の前提としてまず最初に確認すべきは、「小選挙区における勝利」は過半数、すなわち半数以上の票をとらなければならないという事実です。

 考えてみれば当たり前なのですが、右ならば右全部+中道左をとらなければ過半数になりませんし、左ならば左全部+中道右をとらなければ過半数になりません。そして、中道右であれ中道左であれ、実はそここそが最大のボリュームゾーンに当たるのです。
 この様なことを言うと、「最近日本人は右傾化しているから、右は政策的に中道左をとらなくても過半数をとれる」という人がいるかもしれません。しかし、私は肌感覚として、日本人はけっして右傾化しておらず、むしろリベラルな価値観の方が主流になっているように思います(最近様々な「パワハラ」体質が明るみに出ているのはその証左ではないでしょうか)。従って、議論の第二の前提として、図の横軸の右−左は、政策においても人口においても、ほぼ等分されていると考えていいと思います。

 では、安倍政権のとっている「極端な右派への戦略的寛容」とは何でしょうか?

 これは誰とは言いませんが、昨今話題を振りまいている「極端な右派的言論」を繰り返す国会議員や識者の主張を正面からは認めないけれど、だからといって声高に非難もしないことです。

 このような安倍政権の態度は、そうしたいからそうしているのか、戦略的にそうしているのかは不明ですし、本当に人権にもとるような言論については、ぜひ政権自らが正面切って批判していただきたいとは思います。が、しかし、いずれにせよこの態度は、純粋に政治戦略上は極めて有効な作戦だろうと思います。

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https://webronza.asahi.com/politics/articles/2018092600006.html