あと3年なんて悠長なことを言っているヒマはない。今すぐ総理・総裁の座から引きずり降ろすべきだ――と思っている国民は少なくないだろう。総裁選で「横綱相撲」どころか、石破元幹事長に危うく「足取り」を決められそうになった安倍首相。21日、官邸で開かれた閣議や閣僚会議に出席し、総裁3期目の政権運営をスタートさせた。

 総裁選では石破が地方票で善戦。地方票は国民世論に近いといわれるから、来年の統一地方選、参院選で安倍自民は厳しい戦いを強いられるのは間違いない。そんな安倍政権が国民の目をゴマかすためにさっそく打ち出してきたのが「省庁再々編」だ。

 自民党の行政改革推進本部(甘利明本部長)は21日、中央省庁の再々編に関する提言を安倍首相に渡した。安倍首相は「行政の効率化に向けて不断の見直しが必要」と応じていたが、「省庁再々編」は自民党が「改革」をアピールする時に使う常套手段だ。過去には、消えた年金問題で窮地に立った麻生内閣が突然、渦中の厚労省を「年金」「医療」「介護」を担当する「社会保障省」と、「雇用」「少子化対策」を担う「国民生活省」に再編する案をブチ上げている。

とりわけ今回は、厚労省や財務省、防衛省などで公文書の改ざん、捏造、隠蔽といった不祥事が相次いだため、世論を変える絶好のチャンスと捉えているのだろう。

■今後もあらゆる目くらまし作戦

 それだけじゃない。提言では子育て政策をめぐって「政策の実施主体が内閣府、厚労省、文部科学省に分かれている現状を改善すべきとの声が強い」と指摘。一元的に担う新たな官庁の必要性を訴えているのだが、おそらくホンネは安倍政権が大嫌いな文科省「潰し」だ。戸谷一夫文科次官が安倍3選、行政改革推進本部の提言に合わせるかのように辞任したのも、偶然のタイミングとは思えない。

 そもそも、真っ昼間の大臣室で怪しいカネを受け取り、メディアに追及されると「睡眠障害」を口実に国会をサボっていた男が「行革担当本部長」に就いていること自体がマンガだ。戸谷前次官が業者から受けた飲食などの接待費用は6万円余りだが、甘利は判明しているだけで2回に分けて計100万円を受け取っているほか、秘書はフィリピンパブなどで繰り返し業者にタカっていた。どちらが悪質で犯罪的なのかは一目瞭然だろう。その甘利がシレッと「行革には省庁再々編が必要です」と言って、安倍首相が「分かりました」なんて三文芝居にもならない。

 謙虚に、真摯に、丁寧に――が大ウソなのは、もはや国民も分かったはず。安倍政権は「省庁再々編」だけじゃなく、今後もあらゆる目くらまし作戦を仕掛けるだろう。「巧言令色鮮し仁」である。

日刊ゲンダイhttps://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/238113/