■誰に投票したか、証拠撮影させた? 過熱する沖縄知事選

 30日投開票の沖縄県知事選で、期日前投票が前回より大幅に増えている。各陣営は呼びかけを強化。ネット上では「投票用紙の証拠写真を撮らせている」といった情報も飛び交う。県選挙管理委員会は写真撮影のトラブルを警戒し、市町村選管に注意喚起している。

 21日午後、期日前投票所となっている那覇市役所に、有権者が次々と訪れた。受け付けのために数人が並ぶこともあった。

 県選管によると、期日前投票を済ませた人は告示日翌日の14日からの3日間で2万889人と、2014年の前回知事選の同期間の約2倍。那覇市は約3・5倍、沖縄市は約4倍と、都市部で特に増えている。

 自民、公明両党などが推薦する無所属新顔の佐喜真(さきま)淳氏(54)の陣営は、街頭演説やツイッターなどで繰り返し期日前投票を呼びかける。投票総数の6割を期日前が占め、両党の支援候補が当選した2月の名護市長選の再現が狙いだ。公明の県議は「投票日は気が変わって投票に行かない人も出てくる。期日前が一番確実」と話す。

 無所属新顔の玉城デニー氏(58)の陣営も期日前に力を入れる。20日早朝、関係者たちを事務所に集め、「とにかく期日前をやれ」と号令をかけた。自公側の動きで、投票先を迷っている中間層を取り込まれると危惧するためだ。幹部は「名護市長選の二の舞いは避ける。一票も取りこぼせない」。

 こうした中、ネット上では「候補者名を書いた投票用紙をスマートフォンなどで撮影させている」との情報が流れ、投票用紙とみられる写真も出回る。企業や団体などが社員らに「指示通りに投票したかを確認するために撮らせている」との疑念がSNSなどで飛び交い、県内の弁護士たちは20日、県選管に「投票の自由や投票の秘密を侵害する由々しき事態」として、投票所での写真撮影を禁じるよう求めた。

 総務省によると、公職選挙法には、投票所での自分の投票用紙の撮影に関する明確な規定はない。ただ県選管は20日、市町村選管に「トラブルが起きる可能性がある時は、撮影を制限することも可能」と伝えた。公選法に詳しい神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)は「憲法が保障する投票の秘密を侵害するおそれがある。企業や団体に報告させるようなことがあれば、結果として社員らに投票を強いて選挙の自由を妨げることにもつながる」と指摘している。(角詠之、吉田啓)

朝日新聞
2018年9月22日19時0分
https://www.asahi.com/articles/ASL9P5CLSL9PTIPE01V.html