https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180803-44239354-business-pol


(略)

 加計理事長と安倍首相の関係は非常に密接である。加計学園側がうそをついたとすれば、いち早く安倍首相に報告しなければならない。さもなければ、安倍首相は怒るはずだ。だから、加計理事長の言うことはまったくもって信用できない。柳瀬氏も重々承知のはずだ。加計学園側の渡辺事務局長も、上司である加計理事長への報告はしていなかったというが、これも不自然な話だ。加計理事長と安倍首相が面会していたのであれば、すべての筋が通る。

 繰り返し言うが、柳瀬氏は上司への報告をせず勝手に振る舞う男ではない。では、なぜ、そんなことを言ったのか。彼は自分の人格を犠牲にしてまで、上司を守ろうとしたのである。その結果、辞任に追い込まれた。

 ところが、安倍首相は全く責任を取らない。これはおかしな話ではないだろうか。

●「安倍1強」と選挙制度

 同じことが、森友学園の文書改ざん問題で責任を追及されていた佐川宣寿前国税庁長官にも言える。立憲民主党は今、文書改ざんの問題を重く受け止め、佐川氏を告発しようとしている。もちろん、自民党は反対である。

 佐川氏の場合も、彼が嘘つきなのではなくて、安倍首相や麻生財務相を守ろうとしているのである。

 安倍首相は2017年2月に国会で、「もし、森友学園の土地売買で自分や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」と発言した。安倍首相がこんなことを言ったから、財務省は慌てて決裁文書を改ざんしたのである。しかも、その改ざんの事実は、3月に朝日新聞がスクープしなければ、隠蔽しようとしていた。

 その問題について、佐川氏は証人喚問で何度も偽証を繰り返し、野党は佐川氏を告発すると主張している。なぜ佐川氏が偽証したのか。安倍首相や麻生財務相を守るためだ。佐川氏は職を去ったが、安倍首相や麻生氏はそのまま居座っている。これはどういうことなのか。

 これだけのことがあっても、安倍内閣の支持率は意外なほど下がっていない。朝日新聞の世論調査(7月14、15日実施)で支持率は38%。日本経済新聞、共同通信、読売新聞などは、40%を超えている。

 かつては不祥事が起こると、内閣支持率は大幅に落ちていた。中選挙区制のとき、自民党内で複数の派閥があり、内部でも首相を批判できる土壌があったからだ。党内では常にダイナミックな論争が繰り広げられていた。

 森喜朗内閣では、2001年にえひめ丸が米国の潜水艦と衝突事故が起こった以後、10%台に落ちている。第1次安倍内閣では、閣僚の不祥事が相次いだ。3人の大臣が事務所の経費に不正が明るみとなり、このうち農水大臣が自殺した事件が起こった。この時、支持率は20%ぎりぎりまで落ちた。麻生内閣では、リーマン・ショックで国内経済が冷え込み、景気を浮揚させることができなかった。そこで自民党内部で麻生降ろしが始まり、支持率は大きく落ちた。

 しかし、本コラムでも何度も主張しているように、選挙制度が小選挙区制に変わり、自民党の議員たちが皆、「安倍イエスマン」になってしまった。安倍首相にこれだけ多くの問題が噴出しても、自民党内部から安倍批判の声が出ないのである。

 これは、自民党の劣化だと言わざるを得ない。

 注目すべきなのは安倍内閣は不支持率も高いことだ。しかし、不支持は野党に流れていない。これは野党にまとまりがないからである。内閣不支持の受け皿となる野党がないうえ、野党をまとめようという人物もいない。ここも大きな問題である。

●参議院選挙は野党がまとまりやすい

 僕は、立憲民主党の枝野幸男氏にこんなことを言った。

 「来年夏の参議院選挙は、潮目が変わる一つのチャンスだ。参議院選挙は衆議院と違い、政権選択の選挙ではない。もし、安倍内閣にお灸を据えようという気持ちがあるならば、野党は一本化すべきだ」。

 来年は景気が悪化する可能性が高い。しかも消費税が上がり、金利も上がる。もし、参議院選挙で野党が一本化すれば、勝てる可能性がある。衆議院選挙は政権選択の選挙であるため野党がまとまるのが難しいかもしれないが、参議院選挙はまとまりやすい。

 参議院選挙で野党が勝ったら、自民党はこれ以上好き勝手なことはできなくなる。だからここが「安倍1強」の節目になる可能性がある。

田原 総一朗