2023年度に運用開始予定の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」をめぐる世論の反発は強まる一方だ。前提とされた北朝鮮情勢の変化や、膨れ上がる巨額の導入費用からすれば、その必要性を疑問視する声が高まるのはもっともである。

 とりわけ抵抗感を示しているのが、配備候補地だ。陸上自衛隊新屋演習場のある秋田市、陸自むつみ演習場の山口県萩市などである。地元自治体の強い要請を受け、防衛省は地質調査などを実施する業者の選定手続き先送りに追い込まれたばかりだが、小野寺防衛相は河北新報(28日付)のインタビューで「北朝鮮の脅威は変わらず、イージス・アショアは必要だ」として、こう発言していた。

「自衛隊部隊が展開する際には地域に迷惑を掛けることがあるので、地元の要望を聞きながら対応するのが常だ。その場合は(防衛施設周辺生活環境整備法に基づき)民生安定助成事業を活用している」

 札ビラで頬を叩いて、迷惑施設を受け入れさせようという魂胆なのである。民生安定助成事業は防衛施設の設置・運用によって地域に生じる障害を緩和させるため、自治体が行う施設整備等を助成する制度だ。昨年度は約233億円、今年度は約266億円の予算が組まれている。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は言う。

「例えば、米空母艦載機部隊の移転が3月末に完了した岩国飛行場を抱える岩国市に対する助成は昨年度約68億円、今年度約84億円。岩国のような騒音悪化や墜落事故といったリスクが想定されないイージス・アショア配備による障害がどう算定されるか判然としません。施設面積も格段に違いますので、多く見積もっても助成は年間10億円程度ではないか。安倍政権は米軍普天間基地の辺野古移設問題のように、住民の反対運動が強固になる前に決着をさせようという腹積もりなのでしょうが、カネで解決しようとする姿勢はかえって住民感情を逆なでする懸念があります」

 28日に秋田市内で開かれた防衛省による住民説明会は大紛糾だった。6月に続く2回目で、午前と午後の部合わせて約150人が参加。「何度聞いても新屋である意味が分からない」「西日本で大変な災害があったのに、なぜ兵器に大金を使うのか」などの声が上がって予定の2時間をオーバーし、3時間以上に及んだ。

 辺野古移設をめぐり、沖縄の翁長知事は埋め立て承認の撤回を表明。徹底抗戦の構えをみせている。イージス・アショアを突っぱねるのは今しかない。

日刊ゲンダイ
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